第13話 夏のちょっとした事件
雲一つない青空は太陽の独壇場で、強い日差しがじりじりと肌を容赦なく焼きに来る。
時間はまだ朝の八時だというのに気温は三十度を超えようとしていた。
「熱いな~」
玄関を開けたサエナイは思わずそう口にした。
梅雨の時期が過ぎ去り七月に入ってから三日が経過し、今日から真夏日だという。
朝のニュース番組の天気予報でも、暑さに注意をするようにと大事なことなのだろう、三回は言っていた。
こんなにも暑い日は家にこもってクーラーが効いた部屋でダラダラしたいものだが、学校があるサエナイはそうもいかない。
「ヨウコさん、言ってきます」
後ろを振り返ってヨウコにそう告げると、廊下でぐったりと寝転がる神様の姿がそこにはあった。
「いってらっしゃいませ~」
たとえ神様といえ季節には振り回されてしまうようだ。
そこに親近感を覚えて頬を緩めると、サエナイは厚い外へ繰り出した。
学校へ向けて歩き始めてから数分。
「はあ……」
汗で張り付くワイシャツの気持ち悪い感覚と、おでこから垂れてくる汗を目に張らぬよう手で拭いながら、一歩一歩いつもより遅いペースで歩いていた。
こんな厚さではおでこから垂れる汗を眉毛もせき止めきれない。
もう帰りたい気分を存分に感じながらも歩いていくが。
「ああ」
もう呆れたような声を思わず出してしまうが、それも無理はない。
目の前には坂がサエナイを出迎えていた。
この坂を通らない行き方もあるにはあるが、そうすると遠回りになってしまい時間的に今から迂回している余裕はない。
ただでさえ運動させられているような気分になる坂だというのに、夏の間だけは運動とサウナを掛け合わせたような最悪の坂となり果てる。
坂の頂上の路面を見てみると、もやもやと熱気が立ち込めているのがよく見えて、それを見るだけでも気持ちがさらに下がってしまう。
暑くてもせめて、沖縄やハワイといった島のようにカラッとしてくれればましなのだが、サエナイが住む地域はそれとは真逆。
四つの山に囲まれているため風の流れが悪く、暑く湿った空気がとどまり続けるのだ。
うだうだ考えていても仕方ないと、坂を上っていく。
ここだけエスカレーターを設置してくれてもいいと思うのだが。
暑さのせいか胸中文句が絶えない。
あと数メートルで登り切れるというところで、サエナイは足を止めた。
「……」
足を止める理由を作ったものに対して半目を向ける。
「すう……すう……」
そこには今にも坂を転げ落ちてしまいそうな寝息を立てる優奈鬱美がそこにはいた。
ぼさぼさで長い茶髪が特徴的で不健康そうな見た目をしている。
名前の一部を抜き取ると、憂鬱となる変わった名前の少女。
確かにいつも憂鬱そうにしている彼女が、真夏の気温三十度を超えようとしている外で、堂々と寝ているではないか。
第二ボタンを開けたワイシャツ姿に制服のスカートは短くあぐらかいて座っているだらしなさ。
彼女は生まれる性別を間違えただろう。
身なりを整えれば可愛くなるだろうに。
汗をかきながらそう思っていると。
「ふが……」
目が覚めたようだ。
目覚めたならば放置しても大丈夫だろう。そう思って歩き出そうとしたところで。
「お~。地味でサエナイじゃないか~。へいタクシー。私を乗せて行っておくれ」
「……」
まずい、絡まれてしまう。
無視して先を行こうとすると。
「まて~」
そう言いながら妖怪のごとく四つん這いになって猛スピードで迫りくる。
「気持ち悪い⁉」
余りの動きに驚いていると、優奈はサエナイに絡みつくように抱き着いた。
「暑い降りて!」
「やだ~」
「汗で気持ち悪い!」
「やだ~」
振りほどこうと暴れるもまるでタコのように離れず。
もうこのまま無駄な時間を過ごしていては学校に遅刻しかねない。
「はあ」
ため息を漏らして背中に優奈をおぶった状態で歩き出した。
「どうサエナイ? 女子の真夏に汗で濡れた体を押し付けられる感覚は」
「気持ち悪い」
「胸を押し付けられた感覚がどう?」
「べつにいらない」
「ちぇ~。そうだよね~、サエナイにはヨウコさんがいるもんね~」
「それは関係ない」
優奈とのやり取りを軽く流しつつ、坂を上りきると。
「あれはなに?」
優奈は指を指した。
その方向に視線を向けてみると。
何やら波打つような長く青い髪がナメクジのようにうにょうにょしているではないか。
どこかで見たことあるようなそれに一瞬目を奪われるが、とりあえず学校に急がなければと歩みを進め。
「ね~あれなに~」
「新種のナメクジだと思う」
優奈には適当なことを言って誤魔化し、学校へ向かった。
:
本日の授業が終了し、サエナイは一人帰り道を歩いていた。
午後になっても気温が下がることはない。
流石は真夏日といったところか。
帰りの坂道は行きに比べれば楽なものだ。行きよりもスムーズな足取りで坂を下っていたあところ足を止めた。
「……」
そこには朝に見た長く青い髪の塊があるではないか。
山の清掃ボランティアで見たことがあるその青い髪に、これは関わるべきかどうか迷ってしまう。
ヨウコと争っている様子を見せられたばかりだ。
仲が悪いことはあの日に知ったため、ヨウコと共に暮らしている自分が接触していいものか。
ヨウコが毛を逆立てて牙を剝きだしている様子が容易に想像できる。
「ん~」
髪の毛の塊の前で腕を組んで迷ったあげく。
「大丈夫ですか? 確かヒメさん?」
話しかけることを選んだ。
神様が異様な光景で目の前にいるのに関わらず無視するのは罰当たりな気がする。
サエナイの言葉にピクリと反応を示すと。
「水を……水を……」
山であった時の綺麗な声はどこへ行ったのか、かすれた今にもお亡くなりになってしまいそうな声で水をと連呼するではないか。
周囲を見渡してみるが、近くに水道がある場所は見当たらない。
道中何かあったか思い出してみるが、特に何もなかった気がする。
「仕方ない」
サエナイは青い髪をかき分け肩を探り当てると担ぎ上げる。
「うお⁉」
担ぎ上げることによって見えるようになったヒメの表情が目に映り、思わず素っ頓狂な声を漏らしてしまう。
それもそのはず。どこかの国の民族衣装のような服から除く、綺麗な肌をしていたはずのヒメはミイラのようにシワシワな状態なのだ。
これは悠長にはしていられない。
急いで自宅へ向かって歩き出す。
汗をだらだら流しながらも歩き続け、玄関前までやってきた。
流石に一人の女性同然の神様を担いでいるので玄関前の階段を上るのは難しい。
仕方ないのでインターホンを鳴らすことに。
インターホン特有の音が鳴ると、『サエナイ様? どうなさいました?』というヨウコの声が聞こえてきた。
「すいません。少し手伝ってほしくて、玄関まで来てもらってもいいですか」
『はい』
ブツという通話が切れる音が聞こえてから数秒で玄関のカギが開く。
「どうしました……か……」
笑顔で顔を見せるヨウコ。
だがサエナイに担がれるヒメの姿を見た途端。笑顔は徐々に失われていき死んだ目に変貌すると、ゆっくり近づいてくる。
これはまずいことをしてしまったかもしれないと内心で思う。
もしこの間のように喧嘩が始まってしまったら止められる気がしない。
どうしたらいいかと必死に思考を巡らしていると、突然なにやあ体が軽くなったような感覚に陥ると、担いでいたヒメがふわりと見えない力で浮き上がると、そのまま家の中に運ばれていった。
呆然とその光景に呆けていると、近づいてきたヨウコが。
「喧嘩などは致しませんよ。サエナイ様に迷惑をかけるような愚かなことはしません」
そう言ってため息を漏らす。
その様子にどうやら自分の心配は無駄だったことが分かり、胸をなでおろした。
ヨウコもここで騒ぎを起こすのは本意ではないのだろう。
彼女の冷静さに感謝しつつ、二人で家の中に入った。
帰宅したサエナイは手洗いうがいを済ませ、リビングに来ると周囲を見渡した。
「どうかしました?」
サエナイの様子が気になったのかヨウコが近づいてくる。
「ヒメさんはどこに連れて行ったんですか?」
そう。先ほどサエナイとヨウコが家に入る前に、ヨウコが力を使って家の中にヒメを連れて行っていたはずだが、彼女が見当たらないのだ。
リビングにいないとなると、二階の部屋にでも運んだのだろうか。
「お風呂場ですよ」
「風呂場?」
ヨウコの返答に首をかしげる。
なぜ風呂場なのか。あの状態ならば安静に寝かせておくほうがいいと思うのだが。
その答えを確かめるためにお風呂場に行くと、何やらシャワーの流れる音が聞こえてきた。
どうやらヒメはシャワーを浴びているようだ。確かに暑い中で道路に倒れていたので体を洗い流すのは当然だろう。
それにしても運んだ時はミイラのような状態で動けそうもなかったのに、こうしてシャワーを浴びているほどには回復しているとは、流石は神様といったところか。
脱衣所の扉越しに関心していると。
「サエナイ様は何をしているのですか?」
「⁉」
後ろからヨウコに話しかけられ、体を震わせる。
まずい、ヒメの安否を確認するためにここにいるのだが、第三者の目線から見たらこれはまるで、女性がシャワーを浴びている音を脱衣所の扉越しから盗み聞きしている変態のようではないか。
「あ、え、ええと、これは違うんです! 決して女性がシャワーを浴びている音を聞いて堪能しているのではなく、あくまでヒメさんが大丈夫かどうかを確認しようとしただけで!」
ヨウコがあらぬ誤解をしてしまわないよう一生懸命に弁明を口にしていると、ヨウコはよくわからないといった様子で首をかしげる。
こんな変態の弁明のような言葉を彼女が理解できないのも仕方ない。だがそれで自分は決してよこしまなことをしていないと伝えなければ。
サエナイが弁明することに必死になっていると、ヨウコは突然、脱衣所の扉を開けたかと思うと、次に浴室の扉を何食わぬ顔で開けて見せた。
「な、なな、何やってるんですか⁉」
彼女の行動とは思えない大胆さに驚きと困惑が入り混じった声を上げると、ヨウコは特に表情を変えぬままこちらに視線をよこしてくる。
「ヒメの状態を確認したいのでは?」
「いや、流石に女性の裸を見るわけにはいきませんよ!」
「ヒメは別に裸ではないので大丈夫ですよ」
「え?」
ヨウコの言葉に思わず間抜けな声が漏れてしまう。彼女が何を言っているのか分からない。シャワーを浴びるのであれば服は脱がなければならないだろう。
それとも、神様の力で服を脱がなくても大丈夫な、なにかそういったことをしているのだろうか。
サエナイはヨウコの言葉を信じて、恐る恐る浴室を覗いてみた。
そこには、浴室に民族衣装のようなものに身を包んだ状態のヒメが、力なく頭から突っ込み、シャワーを掛けられていた。しかもお湯ではなく水。
「いやいやいや! 何やってるんですか⁉」
「水をかけていますよ?」
「いや、確かにそうですけど! そうじゃなくて、どうして服を着たまま、しかも頭から浴槽に入れてるんですか⁉」
「別に問題はないと思いますが」
声を荒げるサエナイとは真逆の反応を見せるヨウコに、こちらのほうが可笑しいのかと思ってしまいそうになる。
神様の中での常識がどうなのかは分からないが、流石にこれはヨウコのヒメに対する悪意しか感じない。
「水はまあ夏なのであれですけど、流石に頭から入れたら溺死しちゃいますよ」
「あ」
サエナイの言葉でようやく彼が慌てている理由が分かったのだろう。ヨウコは声を漏らすと、言葉を続ける。
「問題ありません。その女は人魚なので頭から水を被ろうが平気です」
「あ」
ヨウコの言葉にサエナイは初めてヒメに会った時のことを思い出す。
確かに彼女と初めて会った時、彼女の下半身は魚の尾ヒレそのものだった。名前にも人魚とついていたので、名前の通り人魚なのだろう。
そう考えれば、ヨウコが何も心配しないのは当然だ。悪意で心配していないのもあるだろうが。
「ん?」
そこでサエナイは今、目の前で頭から浴槽に突っ込んだヒメを見た。
彼女の特徴的だった魚の尾ヒレはなく、今は足が生えていたのだ。
「尾ヒレがありませんけど?」
「聞いたことはありませんか? 人魚は水中では尾ヒレが、地上では人の足に代わるのです」
「へ~そうなんだ」
サエナイはそう言ったものには疎く、初めて聞かされたそれに感嘆の声を漏らす。
ヨウコがさらに言葉を続ける。
「なのでヒメは人魚の姿であれば水中でも呼吸できますが、地上に出て人の姿になると人間のそれになるので水中では呼吸できません」
「体も変化するんですね~」
「はい」
「へ~」
「……」
「……」
サエナイはもう一度ヒメを見た。
今は地上にいるので人間の姿。ということは人間同様の呼吸しか出来ず、ヒメは浴槽に頭から突っ込みシャワーを浴びて、顔は溜まった水に沈んでいる。
「いや! 死んじゃいますよ⁉」
「別にその女一人死んだところで誰も困りませんよ」
慌てるサエナイに対して、冷たいまなざしをヒメに向けるヨウコ。
ヒメがヨウコを嫌うように。ヨウコもまたヒメを嫌っていることを実感させられた。
「て、急いで出さなきゃ!」
流石に神様を殺したとあっては死んでも呪われてしまいそうで、サエナイは急いでヒメを浴槽から引っ張り出した。
「大丈夫ですか⁉」
ヒメを抱えて顔を見る。
拾った時のミイラ状態はなくなり、出会ったとき同様の透き通るような肌を取り戻していて、青く長い髪も生き生きとしているように見えた。
流石にこの程度で神様が死ぬことはないだろうが、一応、安否確認のために頬をぺちぺちと叩いてみる。
「ん、ん~」
少し鬱陶しそうな表情を見せ、どうやら大丈夫そうだ。
「ふう」
安心して一息ついた。と、その時。
「ちゅ」
「ん⁉」
「?……ん?……あ……ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああこの女あああああああああああああああああああ‼」
サエナイは突然ヒメに腕を後ろに回されたかと思うと、顔を引き寄せられ、ファーストキスを奪われてしまった。
余りも突然すぎる展開に硬直してしまうサエナイ。何が起きたのか少し時間を要した後、とんでもない叫び声を上げるヨウコ。
ヒメは唇を離すと、ヨウコを見てしてやったりと満足そうな顔を見せた。
「この女! ぶっ殺してやる! キツですらまだ手にもおでこにもほっぺにもキスしたことないのに! 唇にちゅう⁉ 何してくれとんじゃああわれえええ! 首いいねじ切られたいんか⁉ あああああ! 調子乗んなよくされ外道が!」
ガリガリガリガリと怒りに任せて頭を掻きむしるヨウコの豹変ぶりにサエナイも怖くなってしまう。
「そんなに頭を掻きむしらないでください! ああ、髪の毛が! 髪の毛がたくさん抜け落ちてますよ⁉」
落ち着いてももらうように言葉をかけるも、彼女の怒りが収まるはずもない。
「今ここで殺す!」
「神同士での殺し合いは禁止であることを忘れたの~?」
「きいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
鬼のような顔で高速歯ぎしりをするヨウコ。
もうどうしたらいいのか分からないサエナイを差し置いて、ヒメは立ち上がると、浴槽の栓を抜いて溜まっていた水を流し始め。
「それじゃあアデュー」
そう言って手を振ると、ぽんと小魚の姿に変身して浴槽から流れる水と共に逃げてしまった。
それを見てよく排水に逃げ込んだな。臭くないのかな。という考えが浮かんでしまったが、ヨウコに視線を戻すと、彼女は俯いて体をプルプル震わせている。
「あ、あの~、ヨウコさん?」
恐る恐る尋ねると、バッと目を見開いて顔を上げ。
「あははははははははははははははははははははははははははははは!」
「⁉」
狂気に満ちた顔で一通り笑うと、真顔になって浴室から出ていくと、玄関の開く音が聞こえてヨウコは家を出ていったしまった。
「だ、だいじょうかな?」
余りの急展開に頭が追いつかないサエナイは一人、置いてきぼりにされてしまった。
それから数時間が経過しても帰ってこないヨウコを一人で待っていると、インターホンが鳴り響いた。
「は~い」
ヨウコだろうか。しかし彼女は合鍵を持っているのでわざわざ呼び鈴を鳴らす必要はないはずだ。
出てみると、そこには久しぶりに目にする姿があった。
「ヨウコはいるか? 我が来たぞ」
アミラの姿がそこにはあった。相変わらず学生服に身を包んでおり、しかも大きなひょうたんのような物を持っている。
「アミラさん? ヨウコさんなら今いませんけど」
「ん、そうか、だが待っていればいずれ帰ってくるだろう。ならば家で待たせてもらおう」
「え、ああはい、どうぞ」
「じゃまする」
アミラを家に入れ、ヨウコが帰ってくるのを待っている間。サエナイは家事をこなして晩御飯の支度を始めた。
台所で作業をしていると暇を持て余したのか、アミラが口を開く。
「ヨウコは何用で出払っているのだ?」
「なんかヒメさんといろいろありまして」
流石に唇を奪われましたとは恥ずかしくて言えないので、そこは誤魔化しつつ話すと、アミラが反応を示した。
「ヒメか。あれは面倒な女だな」
「ヨウコさんとヒメさんって仲が悪いですよね」
「ああ、あれは二人の親同士も仲が悪いからな。遺伝みたいなものだ」
「親も仲が悪いなんて相当ですね……」
「あそこは何年たっても変わらないな」
と、アミラと話していると、全身に揺れを感じた。
「地震?」
震度三ほどの揺れが自身と周囲の物を揺らす。
「いや」
少し警戒するサエナイとは別に、アミラは落ち着き払った様子で言葉を零す。
「これはヨウコだな。だいぶ暴れてるようだな」
「ヨウコさんが……」
こんな地震を引き起こすほどの暴れ待っているのかと、不安を覚えていると。
ほどなくして玄関の扉が開く音が聞こえ、サエナイは慌てて廊下へ飛び出し様子を確認しに行くと、そこにはボロボロになったヒメを担いだヨウコの姿があった。
「ヨウコさん」
「サエナイ様。今日は焼き魚にでもしますか?」
家を出る前の豹変ぶりはどこかに行ってしまったようで、すっきりした顔を見せるヨウコに少し安堵して話しかける。
「神様を食べたら罰が当たりますよ」
「それもそうですね」
ヨウコは掴んでいるヒメを一瞥してそのままリビング運んでいった。
「ヨウコ。ようやく帰ってきたか。そんな魚もどきなど放っておいて我と酒を飲むぞ!」
「あんたまた来たの? まあ酒を持ってきてならちょうど飲みたい気分だったからいいわよ」
そんないつも通りの会話を耳にして口元を綻ばせながら、サエナイは台所に戻って料理を作り始めた。
「人間! 今日の夕餉はなんだ?」
「生姜焼きです」
「それは上手いのか?」
「美味しいですよ」
「おお、なら早く用意しろ」
「ちょっとアミラ。サエナイ様に命令しないで」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます