第3話

花は

(もう会えないなら、こんなに

辛いのは嫌だ、死んでしまいたい。

せめてラインだけでも出来たら?

でも、送って奥さんに見つかったら

章一さん大変だし、出来ない。)

毎日、悩む花。

お店に出ても

[花ちゃん最近、元気無いね!]

[若いのに元気出さないと!]

と言われる。

(そんな事言われても私の元気の

源は今、取り上げられてるんだから!)

その日、花は、しんどいから

コンビニに寄って食べる物を

買おうと、していた。

中に入ると直ぐに見慣れた後ろ姿

周りを見て奥さんが居ない事を確認

して声を掛けた。

[章一さん。]

[花!]

[買い物?]

[うん、コーヒー買いに来たよ!

花は?]

[何か、ご飯作る気にもならなくて

何か無いかな?って寄って見た。]

[そうかー大丈夫か?]

[大丈夫じゃない!章一さん私もう

死にたい...]

[花...]

その時、章一も、もう家庭に、うんざり

していた。

[花、もうすぐ俺達が初めて食事に

行った日だな?もう何年に、なる?]

[5年目かな?章一さん日にち覚えて

たんだ?]

[当たり前だろ!忘れないよ!

その日に2人で死ぬか?]

[うん。]

花は首肯く。

2人共、今の生活が限界だった。

決して自分達が正しいとは思っては

いない。

でも、一度芽生えた自分の気持ちを

押さえる事が、出来なかった。

[あなた、何処行くの?]

[仕事だよ!いちいち、うるさいな!]

と言って山村は花の家に花を

迎えに行った。

2人は、初めて食事したカフェで

コーヒーを飲んだ。

そして2人は海へ向かった。

[章一さん、これ、睡眠薬。]

[どうして?持ってるの?]

[あれから不眠症に、なって

病院で貰って飲んでる。]

[じゃあ、それを飲んで2人で

海に飛び込もう!]

[うん。]

海に着いた2人。

[花、生まれ変わったら絶対

一緒に、なろうな!]

[うん、章一さん必ず私を

見付けてね!]

[うん。]

そう誓って2人は睡眠薬を飲んで

手が、離れない様に2人の手首を

ロープで、キツく縛った。

[これで離れる事は無いな!]

[ずーっと一緒だね!]

そして手を繋ぎ海へ身を投げた。

2人に、何の迷いも無かった。

[花、好きだよ!]

[章一さん好きだよ!]

そう思いながら海の底へと沈んで

行く。

(これで生まれ変わったら一緒に

なれるんだ!)

そう願う2人。

だが、それを見ていた釣り人が、

通報して一命をとりとめて、しまった

2人。

意識が戻った2人は生きている事が

悔しくて涙する。

(神様は私達が一緒に、なる事を

許してくれないんですね?)

(どうして、俺の、たった一つの

お願いすら聞いて貰えないんだ!)

その後、辛いが順調に回復する

2人。

明日に退院を控えた2人。

花はやって来た看護士さんに

[気分転換に少しだけ散歩しても

いいですか?]

と聞いた。

[そうですね、散歩位なら、でも

気を付けてくださいね!]

[はい。]

そして花は病室から出る。

事情を病院が、知っているので

山村の病室は教えてくれなかった。

花は下から順番に病室を見て山村を

探す。

山村も一緒だ。

花を探している。

そして5階で、やっと会えた。

[花!]

[章一さん!]

抱き合う2人。

[死ねなかったな!]

[うん。]

[花、花?俺、必ず花を迎えに

行くから、だから1人で死んだり

するなよ!約束な!]

[うん、待ってる!約束!]

その時花は

(何年でも、待ってるからね!)

そう思っていた。

退院の日

山村の奥さんが迎えに来たみたいだ。

病院の外で、会ってしまった。

[この泥棒猫、何してくれてんのよ!

慰謝料を請求するから覚悟しなさいよ!]

と言って頬を叩かれた。

[何やってんだよ!お前は、いい加減に

しろ!]

[花、大丈夫か?]

[大丈夫です。]

と答える花。

[あなた、誰の心配してんのよ!]

2人は帰って行った。

花は、タクシーで家に帰った。

家に着くと

(どうして死ねないの?)

泣いて泣いて泣きまくる花。

それからの花は脱け殻と一緒だった。

何時に、なるか分からない山村を

待つ毎日。

山村は相変わらず奥さんと、もめていた。

[あなた、あの泥棒猫と死ぬ気

だったのね!そんな事は許さないわよ!

一生、働いて貰うから!あの泥棒猫にも

慰謝料請求するから!]

[お前の、そういう所が、嫌なんだよ!]

[嫌で結構!働いて、お金さえ入れて

くれれば!]

(花は、こんな事絶対言わないよな!)

そして季節は春

花は窓の外に咲き出した桜を見て

山村と見に行った、枝垂れ桜を

思い出す。

(キレイだったな~そうだ今年は

1人だけど見に行こう!)

花が、あれ以来外出するのは

初めてだった。

そして車を走らせ、その場所へ

行く。

山村と見た枝垂れ桜が、キレイに

咲いていた。

桜の木の下へ行く花。

すると枝垂れ桜の枝が、まるで

花を慰める様に頬を撫でる。

花は胸が熱くなる。

(来年も、きっと見に来るからね。)

と誓って桜の木から離れる。

神のいたずらか山村も、そこに

来ていた。

居るはずが無いと思っている2人は

ただ歩いている。

今どちらかが振り替えれば会えるのに

気付かぬまま帰る2人。

花はそれからは山村と行った所を

廻る事にした。

季節ごとに行く。

行く度に山村の笑顔が浮かぶ。

山村も同じく花と行った所を廻って

いた。

でも、2人が、出逢う事はなかった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る