第2話 底なし沼
母は何故かモテる。
今までに何人の彼氏がいたか…
私にはない魅力があるのか、フェロモン香水でも振ってるのか
私が幼い頃よく佐伯さんって言うおじさんにドライブに連れて行ってもらった。
「お父さんにはナイショだからね」
と、母に言われていたのもあって父に悪いことをしている気分だった。
佐伯さんは、タクシーの運転手をしていて運転好き。父には連れて行ってもらえないような遠いところへも良く行った。
幼い私は佐伯さんを佐伯のおじちゃんと呼び懐いていて、嫌いではなかったと思う。
両親が離婚する小3くらいまで佐伯さんには会っていて、あの頃流行っていたマウンテンバイクを父に買ってもらうと少し遠い佐伯のおじちゃんの家までわざわざマウンテンバイクを見せに1人旅をした記憶もあるくらい懐いていた。
ただ、佐伯さんと会うのはそれが最後だったかな…
母が違う男の人に送ってもらっていたのをみた。
髭を生やした汚らしい人ってのが第一印象。
佐藤さん、バツイチ子持ち。
「佐藤さん、男1人で娘さんを育ててるんですって!あなたと年も離れてないの!今度紹介するから仲良くしてね!」
と、母から言われた。
待って。
仲良く?って何?友達になるの???
頭が混乱した
その頃から家の固定電話がうるさく鳴るようになっていて、母からは出なくていいからと言われていた。
しかも、
「もし、佐伯さんだったら切っていいから」
と言われ、母がいない時の夕方電話に出た。
佐伯のおじちゃんだった。
「もしもし!」
「ゆーちゃんか?」
「もしもーし あれ?聴こえないな〜」
と、電話を切った。
また電話が鳴り、また出た。
「もしもし!」
「ゆーちゃん、佐伯のおじちゃんだよ。ゆーちゃん、切るようにお母さんに言われているかもしれないけど切らないで聞いてくれないか。」
「・・・」
「お母さんからおじさん振られちゃって、ゆーちゃんにはもう会えないけど、元気でいるんだよ。」
と佐伯のおじいちゃんから言われた。
もう、会えないんだ…と思ったら寂しくなった。
そこからは、佐藤と付き合うようになった母がだんだん変わっていく。
大好きな父と離婚していたことも後から聞き、引っ越すまで家庭内別居が始まった。
一階と二階に別れ父と母は別々。
私は、母がいる時は父と口も聞いてダメと言われ母がいない時に父が生活する一階に入り浸っていた。
多分この頃父も自分が離婚したことを知らなかったのかもしれない。
公文書偽造?のような形で父を名乗り佐藤が母と父を離婚させたのだから…
ある日、佐藤の家に連れていかれ佐藤の娘に会った。
3つ歳上のお姉ちゃん、私には成人した兄がいるがお姉ちゃんが出来るんだよ!とヨイショされ、私はまんまと喜んだ。
土曜になると、佐藤の家に私は泊まりに行かされ美恵ちゃんと2人で過ごした。
母と佐藤はいない、2人でお風呂に入ったり、好きな人の話をしたり、遅くまで起きていたことがなかった私には新鮮な夜を過ごした。
朝起きると、一緒の布団に寝ていたはずの美恵ちゃんが隣に居ない…
台所の方でガタガタと音がしてそっと見に行くと、佐藤が美恵ちゃんに何度も蹴りを入れていて恵美ちゃんは丸まり何も抵抗もしないまま耐えていた。
「なにしてるの?」
と声を掛けると、佐藤は驚き急に笑みを浮かべ
「ゆーちゃん!おはよう!起きたの?」と誤魔化した。
「なにしてたの?」
と、また聞くと
「戦いごっこだよ!」
恵美ちゃんが怯えていて、これは、おかしい。普通じゃないって小3の私でも解った。
家に帰り、母にそのことを話すとまったく信じてくれなかった。
そのまま、土曜になると泊まりに行かされてその度に、恵美ちゃんから色々な話を聞かされた。
「夜になると怖い…ゆーちゃんが泊まりに来てくれるとお父さん優しいから…」
いままで、美恵ちゃんは何度も佐藤から暴力を受けていたことを知った。
そして、母は私が必死であの人は辞めた方がいいと止めてもどんどん佐藤の底なし沼に沈んでいった。
発泡性細胞 トルコキキョウ @toluko-kikyou
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