第25話 その童有能につき
片手を動かせないあたしに代わり、侍従頭が座敷童を寄越すと、確かに言っていた。
けどこんなに小さくて癖が強い……じゃなく、個性的な相手だと、誰が想像できるだろう。
頭痛を堪え、念のため用向きを確認する。
「えっと、スサノオ……様のお世話をしに来てくれたんですか?」
「当然なのです! 侍従頭から何を聞いてやがったんですの?」
語尾が微妙に変わっている。
この口調、ひょっとして素ではなく作っているのだろうか。
そんな疑問を密かに抱きながら、問いを続ける。
「聞いてはいましたよ。けど、体が小さいと家事をするのも大変じゃ……」
この身長では、竈の上に釜を載せるのも厳しいはず、というより無理だろう。
「光の射さない
「うどっ娘……」
確かに髪も肌も真っ白だけど、その例えはどうだろう。
響きのせいか慣れなのか、まだ忌子と呼ばれる方がましに思える。
そしてまたも語尾が安定しない……いや、もうこれ以上気にするのは止めよう。
気にしたら負けだ。
果たして勝ちがあるのかは謎だけど。
「メイは座敷童! 座敷のことなら誰にも負けねえのですよ!!」
そう言うと、一回り小さい座敷童が大量に生み出された。
「さあ始めるのです!
メイの指示を受け、小さな座敷童達が一斉に家事を始める。
雑巾掛けは手分けして行われ、叩きは肩車を重ねることで見事に高い場所にも届いている。
土間では野菜を洗う者、まな板の上で押さえる者、両手で持った包丁で切る者と、手際よく調理が進められていく。
里でも火や風を起こす妖術を見たけど、こんな術は見たことがない。
「凄い……」
感嘆の声を漏らすと、即座にメイが反応した。
「もっと褒めやがるとよいですね!」
まだ語尾に違う種類があるとは、そっちの意味でも凄い。
しかしなんて便利な術だろう。
これなら、一度に沢山のことを片付けられる。
ただ、実はこの術も万能ではないらしい。
まず家の中でしか使えない。
そして生み出した座敷童達に蓄積された疲労は、術を解いた瞬間一気にメイへ押し寄せるとのことだった。
だったという微妙な言い方になったのは、術を解いた直後にメイが疲労で倒れ、鈴で呼んだ侍従頭に理由を聞いたからだ。
幸い押し入れの隅に寝かせておけば回復するようで、翌日には再びあの調整で活躍し、そしてまた倒れた。
本当に凄いけど、どうにも残念な子という印象が拭えない。
なお実は年齢が二桁を超えており、あたしの方が遥かに年下だったのは、ここだけの秘密。
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