第5話 スポーツジムのコーチと幼女

 オレは白瀬しらせと、スポーツジムで汗を流す。


「ねえ、小宮山こみやま、くん」


 ランニングマシンで走っている白瀬が、マットでストレッチをしている少女と男性コーチをに視線を向けていた。


 少女は一〇代前半くらいか。細マッチョのコーチに、手取り足取り教わっている。


「あれって、さ、デキ、てんの、かな?」


 あんな小さい子も、性妄想の対象かよ!


「走り、ながら、よく、そんな、妄想、が、できるな」

「妄想でも、しないと、やってられ、ないよ。こんな運動っ」


 話しながらしゃべるのが限界だったのか、白瀬はマシンのモーターを減速させた。ウォーキングに切り替える。ちょっと早足くらいに。


「あの二人さ。トレーニングしている割に、なんかベタベタしてない? 手とか足とか触っててさ」


 見ていると、少女とコーチはかなり親しい関係のようだ。少女は全開脚させられて前から腕を引っ張られても、平然としている。かなりコーチを、信頼しきっているらしい。


 コーチも、曲がっている少女の足を伸ばしたり、手の位置を調節したりしている。


「体操の選手だろ? あるいは整体の先生とか、そんな感じだぞ」


 今は小学生前後でも、ちゃんとしたストレッチやマッサージをしてケガを減らすという活動も活発だ。若いうちにケガをしたら、取り返しがつかない。


「それにしては、スキンシップ激しすぎ。女の子も、気を許し過ぎじゃないかな。あのままだと、誰もいないシャワー室でオトナのマッサージに突入しちゃうよ」

「ないわ! 行き過ぎたポリコレかっ! なんでもかんでも性に結びつけてやるなよ」

「可能性があるって話をしてるのっ」


 足を止めて、オレは白瀬に問いかけた。


「お前、エロマンガ家にでもなったら?」


 ぜえぜえ言いながらも、想像セックスでもち直せるんだから。


「ムリだよ。私の絵のセンス、小宮山くんも知ってるじゃん」


 白瀬もマシンから降りて、スポーツドリンクを飲み干す。


「まあ、そうだな」


 コイツは、マンガも小説も読み専門だった。「消費することが生きがいなので、生産者には回りたくない」というのが、コイツの信条である。


 グルメリポーターとして味わいたいのと、料理人になるのは違う。


「私の妄想は、私だけのものなの。人に消費されたくない」


 なんだよ、そのこだわり?


「うわあ、身体が柔らかいね。I字バランで、すごいプレイとかさせられそう」

「だから、幼女にそういう妄想すなっての」


 こういう頭がオッサンの奴が妄想を外部に発散するから、周りのガードが固くなるんだろうな。

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