#41 彼女のいない時間
「ただいま!」
「おかえりトオル!」
「おー、おかえり、トオル。なんだ? 随分いっぱい持ってるなぁー」
リビングに父さんと母さんが揃っていた。
二人に「おかえり」を言われるなんて、いつぶりだろう。
なんだか嬉しい。
二人ともなんだか楽しそうに見えるし。
「お土産! 父さんと母さんにもあるよ! 俺のオススメはこれ、
「トオル! これ、
「へへへぇ~っ、行ってきちゃった! ユウキが招待チケット持ってて、誘ってくれたんだ」
「おいおい、チケット入手困難って有名だぞ。サクマグループってそんなに凄いのか」
「ユウキもラッキーだって言ってた!」
俺は土産をテーブルの上に並べながら、椅子に腰かけた。
「嫌だ、ご家族にお礼の連絡入れるべきかしら。お土産だって、こんなに……、結構な金額になるわよね」
「母さん、お土産は俺が買ったんだ。全部俺の奢りで、ユウキにも半分持って帰って貰った。チケットのお礼は言っても良いと思うけど」
「え???」
席を立ちかけた母さんは、目を丸くして父さんに目配せをした。
父さんは首を振って、俺に目配せする。
その様子を見ながら、母さんは鞄からタブレットを取り出して椅子に座り直す。
説明しなきゃいけないことが沢山だ!
俺は二人に今日のことを話し始めた。
ユウキに誘われたところから
俺がテンション高めなせいか、父さんと母さんもいつもより賑やかな反応に感じた。
食い気味の父さんがちょっと面白くて、
話の最中にユウキの両親から連絡が入ったらしく、母さんはタブレット相手に恐縮して頭を下げていた。
お礼を言われちゃったけど、どうしたらいいの、まったく、なんて訳の分からないことで怒られた。
父さんもプランナー(手帳タイプの多機能端末)を持ってきて、母さんからデータを転送して貰っていた。
サクマグループかぁ……、なんて思わせ振りに呟いていたけど、その後何も思い付かなかったみたいで、仲良く遊べ! とだけ言われた。
本当は、今夜は一人、ミリのことを考えるつもりだったんだ。
でも、そんなことは忘れて、気がつけば寝る時間になっていた。
三人で、リビングでこんなに話し込むなんて、珍しい。
あっという間で、とても楽しい時間だった。
部屋に戻った俺は、電源の入っていないプロジェクターを充電ターミナルのホルダーへ置いた。
会うのは、もう少し、心の中を整理してから。
おやすみ、ミリ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます