#40 standalone

 真っ暗で人の姿のない学校の入り口。

 ユウキと俺は向かい合っていた。両手いっぱいに荷物を抱えて。



「タドコロ、今日は付き合ってくれてサンキュな! すっげー楽しかった!! お土産までこんなに買って貰っちゃって」


「こっちこそサンキュー! PrimordiaプリモルディアTatooineタトゥイン最高に楽しかった! ユウキが誘ってくれなきゃ、俺には行く機会はなかったかもしれないし、こんな貴重な体験どれも出来なかった」



 俺は両手の大きな袋を見せるように掲げた。

 シューティングゲームのランキング報酬で入手した大量のゲーム内通貨は、所持金としてユーザーアカウントに残せるという説明だった。

 招待チケットのユーザーアカウントは最低でも一年は保管されるけど、俺は次いつ来れるかも分からない。

 丸形小型爆弾グレネードをはじめとする持ち帰れる商品を買って全部使いきって、ユウキと山分けにした。

 ちょっとした豪遊だった、むふ!



「あと、……話も。俺、誰かとこんなに自分のこととか話したことなかったから、……話したいと思ったこともなかったんだけど。……知らなかった」


「何をよ?」


「誰かに話すと、分かってることも分からないことも一つずつ整理されて、これでいいんだ、大丈夫って思えること。解決することだけが大事じゃないんだなって。自分のことや、もやもやした気持ちを言葉にするだけでも、何か軽くなって、また明日ってリフレッシュ出来るんだって」


「そんなんなった?」


「うん」


「なら良かった。また遊ぼーぜ。ミリにも会ってみたい・・・・・・し」



 ユウキはニヤッと笑った。



「今度な。今日はこのまま一人で考えたいから。ミリを消して・・・、こんなに離れてるのは久しぶりなんだ」


「じゃまたな」



 ユウキは手を振りながら、ポートの一つに消えていった。

 俺も別のポートに入り、自宅への転送を要請する。

 セルフスクリーンが現れて、ユウキと繋いでいたペアリングの解除を次々と告げる。

 俺は右耳後ろのチップを長押しして、外部ポートを初期化リセットした。

 遠隔接続可能なアプリのペアリング解除が表示される。


 完全な「接続ゼロ」。

 セルフスクリーンに明示されるその・・状態表示が、何故か目を引いた。

 なんだか不思議な気分だった。

 静かで、穏やかな、悪くない気分だ。



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