#39 光
思い返してみれば、俺の感情が大きく動いたのは
小学生の時の、あの時。
そして、今、同じように大きく揺さぶられている。
原因は、ミリへの特別な感情。
それって……
「LOVE、愛かって?」
俺はユウキを見上げて、唾を飲み込む。
ヒラタ達と話した後から、ずっと気になっていたんだ。
もし、これがそうなのだとしたら、俺は見つけたことになる、究極の美徳を。
でも、もしそうなのだとしたら、不毛だ。決して実らない。
相反する興奮に俺はかき乱されていた。
「んー。ちょっと、違うんじゃないかと」
申し訳なさそうな顔でユウキが言った。
「違う?」
「うーん……。タドコロはさ、ミリが
「……」
「思いたいというか、思ってるし、信じてる。だけど現実には個体としてのミリが見つからないから苦しんでる。それって、恋とか愛とか種類以前の問題だと思うんだよな」
『
腑に落ちる感情が次々と思い浮かんだ。
『だけど、現実では見つからなくて苦しんでいる』
その通りだ。
「刺激的な結論に飛び付くのは魅惑的だけどさ、焦り過ぎだと思う。『
ユウキはそこまで話しきると、ジャスミンティーをゆっくりと流し込んだ。
知らない大人みたいな、澄ました姿に、俺の中の高揚した何かがスンッと引いた。
「そっか……。そーだな。……俺、苦しいってことに少し酔ってたかも、やぺっ」
「俺は
「え?」
照れ笑いで取り繕った俺に笑顔で答えたのは、いつものユウキだった。
他愛ない雑談と同じ、穏やかで軽やかな空気。
肩の力が抜けた、くだけた姿勢と仕草。
さっきまでの変な緊張が消える。
「
「確かに。そう言われてみればそうかも。なんで俺はいるって信じたりするんだろう」
「な?
身体の奥から何かが溢れてきた、今度はとても温かい何かが。
ユウキの言葉によって、堰も俺も、
その温かさに混じるように溶けていく。
「ミリは
込み上げて来た熱はキラキラと光となって世界を溶かし、キラッキラのユウキの笑顔を溶かしながら消えた。
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