#38 本当のこと
「そんな昔からなんだ」
「うん、記憶の始まりからミリはずっと一緒。俺と同い年の設定でずっと一緒に育ってきた。って言ってもミリの場合は外見だけだけど」
ユウキに促されて、ミリの
ユウキと俺みたいに少し話しただけでも、俺の
言われてみれば、俺の日常のほとんどは
それは便利だからだし、指摘されたところで少しも違和感はないけど。
「イメージわかないなー。俺は物心ついてからの半年くらいしか3Dアシスタント使ってないし」
「
「AIだって分かったのは?」
「小学校の時。スポーツの授業の休憩時間に、他の生徒がミリに酷い扱いをしたんだ。そいつは
話す途中で少し気まずくなった。
野蛮な過去だ。
ユウキに引かれはしないか。
「やっちゃったわけか?! 言葉で? 暴力で?」
引くどころか食いついたっ。
心なしか瞳が輝くユウキに俺は胸を撫で下ろす。
「小学生だからな、暴力っていえたもんじゃないけど、まぁ、手が出ました」
「まぢか」
「ちょっとした問題にはなって、両親も学校に呼ばれたり相手一家に謝ったりして。で、説明された。ミリは
「それって、タドコロの気持ちはどうだったの?」
「あんまり覚えてない。世界が変わったってくらいの衝撃ははっきり自覚があるけど。それから、ミリは学校に行く時だけ使うようになって、家族の会話にもほとんど出なくなった。学校絡みで話す必要がある時も、3Dアシスタントとか
「そっかー……」
「ずっと平気だったんだ。ちゃんと、わかってた。……なのに、最近おかしくて、俺。なんか、なんか、ミリに変な期待をしてるっっ」
腕で頭を抱えて、俺はそのままテーブルに伏した。
俺の話したかったことは
するっと口からこぼれ出た言葉に、今更のように気づかされる。
「……言っちゃえよ、笑わねぇーから。変だなんて引かねぇーから」
ユウキの言葉は暖かい。
俺の胸の中の縮こまった何かが柔らかく溶けていく。
「……ミリの俺を見る目がミリの意思なら良いって思う」
「ミリの口から、ミリ自身の言葉を聞きたい。プログラム演算の結果じゃない、俺の言葉を
堰を切ったように、すべてを吐き出すまで止まらない。
「音声認識でも言語解析でもなくて、ミリの
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます