#35 報告《レポート》

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  ID 81M0 7832 7064 1000 タドコロ トオル

  ◯月✕日 特記事項


  精神的影響とみられる心拍数の増加及び体温上昇

  対象ユーザーには珍しい 情緒不安定、イラつき、不安傾向

  NAITEAナイティー3Dアシスタントへの依存・強い感情を示す言動が見られました。

  罹患りかん可能性 2%

  

  〔今後の対応と留意事項〕

  NAITEAナイティーシステムのユーザー個別設定に修正を行います。

  ユーザーの3Dアシスタントに対する言動をより詳細に記録・分析し観察します。

  ユーザーの心的不安や感情の変化に注意を払い、家族から適宜サポート出来るようにしてください。 

 

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 NAITEAナイティーシステムには、ユーザーの教育状況について保護者ガーディアンズと情報共有する仕組みがある。

 設定された任意の日に、月毎の状況を通知する「定期報告」と、特記事項が発生した時に随時行われる「特別報告」だ。

 NAITEAナイティーサポートセンターから3Dプロジェクターが送られてきたその日、トオルの保護者ガーディアンズとして登録されている両親は、初めて「特別報告」を受け取った。


 内容は大したことではなかった。

 ユーザーによっては定期報告の中にまとめられるような、些細なことだ。

 タドコロトオルが、それまで余りに基準値範囲内に収まり過ぎていたための「特別報告」だったと言って良い。

 簡素な書式からも、この報告が形式的なもので、NAITEAナイティーシステムにおいて重要視されていないことは明らかだったし、父親のススムも母親のミチコもそれを十分に理解してはいた。



「心配しすぎだよ、トオルは大丈夫だって。ミチコもよく知っている通り、優しくてしっかりした良い子だ。ミリの件だってミチコに似て優しすぎるだけだよ。じきに分別がつけばトオルだって変わる」


「トオルが脱落したら私のせいだわ……」


「しないよ。トオルが血迷ってたとしても一時的なものだ。トオルにも、ミチコにも問題なんて一つもない」


「ススム……」


「完璧なアシスタントナビゲーターなんだ。俺たちだって長いことお世話になった。信頼だってしてただろ? 依存したっておかしくない、そこからまた成長するんだ」



 ススムはテーブルに並んだパックの一つを開けた。

 ぎゅうぎゅうに詰め込まれたスペイン風オムレツを大胆に二つに切り分けると、片割れを自分の取り皿に移す。



「でも、ミリは」



 ススムにオムレツのパックを差し出されて、ミチコは一度言葉を止めた。

 パックの中の残りを自分の取り皿に移しながら、ミチコは再び口を開く。



トオルあのこにとって、最初は人間と変わらなかったのよ。私のせいで」

 

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