#32 PrimordiaTatooine《プリモルディアタトゥイン》


「ジャジャーンッ!!」



 ユウキの飛びっきりの笑顔と一緒に、エムラップからポート内全体にヴァーチャル映像が出現した。

 雰囲気たっぷりのナレーションと一緒に、俺らを囲む映像とBGMがどんどん変化する。

 PrimordiaプリモルディアTatooineタトゥイン―――――――架空の惑星。

 このヴァーチャルオープンワールドは、はるか昔、世界中で人気となったSF映画の世界をテーマにしている。

 古典SFの世界観を出来る限り忠実にオープンワールドに再現しながら、最新ゲームのアトラクションをふんだんに盛り込んでいる、らしい。

 中でも、舞台の中心となる宇宙空間でのシューティングや、人々が熱狂したという特殊な剣や力を使ったアクションバトルがPrimordiaプリモルディアTatooineタトゥインの目玉だ。

 NPCにもマニア垂涎すいぜんの隠れキャラがいるとか、いないとか。

 というか、この、宇宙を疾走する感じ、映像のレベル超えてないか?!



「すっげぇええーーーっっ」



 思わず口を開け見入ってしまう。



「これ、解像度高いなぁー、PRとチュートリアルだからかもだけど、結構期待できそう。タドコロはヴァーチャルオープンワールドよくやる?」


「たまにくらい。俺元ネタも全然知らないけど、知ってる人たち絶対来たいよな? PrimordiaプリモルディアTatooineタトゥイン


「おー、チケット全然取れないって。うち・・に回ってきた招待チケットも、ほとんどVIPに回されちゃってる」



 ……俺なんかが、行けるところではないんでは。

 

 言って良いものかユウキを眺めていると、気づいたユウキはピースサインを向けてきた。



「やったな、こんなチャンス、サクマユウキにも中々ないぞ」


「まぢか」


「ねーよ」



 どちらからともなく、俺らは幸運と、興奮に、笑い合った。

 チャンスが降ってきたのなら、変な遠慮なんかしなくていい。

 手にしたものは、皆平等だ。

 サクマグループの御曹司のユウキも、そのオマケの俺も。

 幸運は感謝して、喜べばいい。


 すっごい贅沢なことを言ってる、とは思う。

 でも、ユウキといると、そう思えた。

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