【 卒業アルバム 】

 地元の居酒屋で10年ぶりに再会した、小学校の時の親友三人。

 居酒屋の一番奥のテーブルに三人座りながら、あの頃の話に花が咲いていた。


「あの知美ともみがずっと、字がまともに書けなくて、みんながいじめてたろ。床を拭いた汚ねぇモップとかで、頭をグリグリしたり、床に土下座させて、大名行列で『が高い!』って、手や頭を踏んだりして、みんなでいじめてただろ。あの知美が原因なんだぜ」

「へぇ~、でも何で知美が、卒業アルバムの回収の原因になったんだ?」


 俺がそう訪ねると、淳司はニヤリとし口角を上げる。


「それがな、学級委員長のあの真面目な石田いしだが、知美のいじめられていたことをその卒業アルバムに書いちゃったらしいんだ。それを知美の両親が怒って学校に言ったんだってよ。それで、卒アルが回収されたらしいぜ。後からまた再配布があっただろ。そこの部分を削除してまたみんなに配り直したらしい」

「そんなことがあったのか。知らなかったなぁ~」


 お酒の回ってきた武英が呑気にそんなことを言う。


「知ってるか? 知美の家、商店街で小さな食料品店やってただろ。そこで賞味期限切れの牛乳を売っていたって、石田がその後、学校や商店街の会長に訴えて、知美の両親が謝りに来たんだけど、そのうわさが広がって、店がつぶれたらしいんだ」

「えっ! それは、石田の復讐か?」

「そうかもしれねぇ。卒アル回収のかたきを打ったんじゃねぇかな。石田も学級委員長のくせに、酷いやつだぜ」


 淳司はそう言うと、ジョッキに入ったビールをグビグビと勢い良く飲み干した。


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