心の闇

 泣き声が聞こえた。

 暗闇の中で一人、子供が泣いていた。



 誰だろう?



 そう思って目をらすと、なんとそれは自分だった。



『お母さん…』



 子供は泣く。



『ごめんなさい。おれのせいで……』



 泣いて、子供はひたすらに詫びていた。



 助けられなかった母親に。

 助けたつもりが、逆に追い詰めてしまった母親に。



 ――― ああ……



 拓也は絶望する。



 これは、自分の心だ。

 昔、誰に言うこともなく、無理矢理封じ込めた心だった。



 責められるのが怖かった。

 お前のせいだと言われるのが怖かった。

 でも慰められるのも、逆に惨めになって嫌だった。



 だから、隠した。



 責められたくもなかったし、慰められたくもなかった。

 でもこの胸の内を吐露すれば、それを聞いた相手はどちらかの言葉を口にするだろう。



 だから、言わないことにした。

 かといって自分の中で消化できるほど、この気持ちは簡単に割り切れるものではなかった。



 どろどろとして、心の奥にこびりついて、意識すれば奈落の底に吸い込まれそうな心の闇。



 これを抱え続けていたら、気が狂ってしまう。

 だから消化できないまま、自分の奥底に封じ込めた。





 目を逸らしていたかった―――……




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