幸せだった思い出

 笑い声が聞こえる。

 幸せそうな笑い声だ。



 幼い子供が、広い芝生の中を駆けていた。

 その子供の周りには同じ年くらいの子供が何人かいて、みんなで芝生を駆け回っている。



 なんてこともない、微笑ましい光景だ。

 皆が楽しそうに笑う中、その子供も笑っていた。



 子供は幸せだった。



 たくさんの友達に囲まれて、みんなで楽しく笑って。

 そんな日常が、子供はたまらなく幸せだった。



 子供たちが駆ける芝生に、白い大きな犬が入ってきた。

 犬は子供たちを次々に追い越し、先頭を走るその子供に飛びついた。



 犬は子供を押し倒すと、尻尾を大きく振ってその顔を嬉しそうに舐める。

 子供はきゃあきゃあと高い笑い声を零しながら、犬の頭をなでてやった。



 犬の周りに他の子供たちも集まって、みんなでおしゃべりをしながら時間を過ごした。



 そして夕日が差し込む頃、それぞれが自分の家へ帰っていった。

 子供も犬を連れて、自分の家へ帰ろうと歩き出す。



 その時、誰かが子供を呼んだ。

 子供が顔を上げると、夕日を背にして誰かが立っている。



 子供の顔が嬉しそうに笑みを作った。

 犬から体を離して、その誰かに向かって駆け出す。



 犬も一緒になって走り出すが、この時ばかりは子供の足の方が速かった。



 子供は走る。

 息を弾ませて、心を躍らせて。



 両腕を広げて待つ誰かの胸の中に、子供は勢いよく飛び込んだ。



 柔らかくて、温かくて、いいにおいがする胸の中。

 子供は、その胸の中で一番の幸せを噛み締めて笑う。



 ……………

 …………

 ………


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