終話 愛とは、献身

「ごめんな、ツナちゃん。昨日は裂けるチーズを食べさせてあげられなくて」

「謝るトコロ、そこなの?兄君」

「ちーさん、最近様子がヘンなんだ」

「だいぶエキセントリックな妹ちゃんだね。でも私、なんか分かるな、契ちゃんの気持ち」

「俺の方が分かってると思うぞ」

「どうして張り合ってくるの?シスコン?契ちゃんがブラコンなら、兄君はシスコンなの?そういうことなの?」

「朝からイチャイチャしないで、お兄ちゃん」

 俺とツナちゃんの間に手を入れ、切り拓(ひら)くように入って来るちーさん。

「ちーさん、居たのか。中学校は反対方向だぞ」

「いいの。私がお兄ちゃんを守るの。・・・おい彼女(仮)」

「(仮)」

「お前にお兄ちゃんが救えるか?」

「兄君、いつの間にか山犬の姫にでもなったの?」

「お前に、お兄ちゃんが、救えるか?大切なことだから二回言った」

「・・・救いの定義にもよるけど・・・。うん。そうしたいと思ってるよ」

「これは、私とあなたとの間の“契り”。これを覚えて実行してね。あとは頼んだから」

「え?」

キキーッ!!

 前から暴走する車が1台。歩道に突っ込んでくる。人をはね飛ばし、周囲に悲鳴と絶叫が上がる。

「お兄ちゃん」

「ちーさん?」

 ちーさんは笑顔で、しかし声には出さずに何かを話す。そして俺のことを突き飛ばした。


 車はちーさんの小さな身体を、更に半分の大きさにした。




********************


 あれから色々なことがあったけれど。

 ツナちゃんは、ちーさんとの約束通りに、俺の引き裂けそうな心を、いつでも繋ぎ止めてくれた。


 俺は忘れない。

 俺に妹がいたことを。

 血は繋がっていないけれど。

 俺を本当に大切にしてくれた、妹がいたことを。

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妹は引き裂きたい(物理) ぶんぶん @Akira_Shoji

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