5話 裂けるチーズこそ、至高
「ちーさんに聞きたいことがある」
「何でも聞いてお兄ちゃん。知ってること、全部教えてあげる」
「俺とツナちゃんは、なぜ簀巻(すま)きにされているのかな?」
毛布と座布団にくるまれ、引越し用のビニールひもでグルグル巻きにされている、俺とツナちゃん。その二人の間に割って入るように、ソファに腰かける我が妹、ちーさん。
「そんなことよりもテレビを見て、お兄ちゃん。不倫男が奥さんに刺されたよ。浮気する男の末路って、こんなものよね」
「およそ、おうちデートで見る内容のドラマじゃない気がするゾ」
「あぁ、おやつ美味しい。見てお兄ちゃん。裂けるチーズ。美味しいよね。おやつの王様だと、契は思います」
「わ、私もそう思うわ!契ちゃん」
「は?あんたには聞いてないけど?気安く名前を呼ばないでくれる?」
「しゅん・・・」
「ツナちゃんがしゅんとしている。ちーさん、ツナさんも食べたいようだ。裂けるチーズを分けてあげてほしい」
「そこなの?兄君?」
「お兄ちゃんが言うのなら。・・・さぁ見なさい。裂けるチーズは、裂かれるためにある。引き裂かれるために生まれたおやつなの。あなたにこの悲しさが理解できる?にもかかわらず、その自己犠牲のゆえに、裂けるチーズはかくも愛される。愛とは・・・献身よ」
「なんか・・・裂けるチーズって・・・。深いわね!」
「よく理解できたようね。じゃあ、ご褒美」
ちーさんは簀巻きにされたツナちゃんの口元で裂けるチーズを引き裂き、ヒラヒラさせる。
「あの、もう少し、下げてくれない?契ちゃん」
「食したいのなら、もっと首を伸ばしなさい。求めれば、与えられる。努力なしに、成果は得られない」
頑張って首を伸ばすツナちゃん。可愛い。
「まぁ、あげないんだけどね」
「(ガーン!)」
ショックを受けたツナちゃんの顔、可愛い。
「ど、どうしたの?契ちゃん。そんなに私を見つめて」
「引き裂きたい」
「・・・チーズのことよね?」
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