4話 妹は引き裂きたい(物理)
接木 繋(つぎき つなぎ)――通称、ツナちゃんは俺のクラスメートだ。初めての彼女。可愛い。腰のあたりまで伸びた長い黒髪。ぱっつんな前髪の下の大きな目が真っ直ぐに俺を見つめている。可愛い。程よい膨らみのお胸、くびれた腰、足は少し太い。そんなところも可愛い。背は俺と同じくらい。ちょっと高い。可愛い。惜しむらくは、可愛いツナちゃんが天地逆転していることである。
「兄(けい)君。・・・大丈夫?」
「大丈夫ではない」
「どうして逆さまに吊るされてるの?」
俺の足首は太いロープで縛られ、二階の手すりに結わえられている。そこから逆さまに吊るされ、俺の髪の毛が床を掃いている。
「クイズが不正解だったから。罰ゲーム」
「罰ゲーム」
「頭に血が上ってきてツライ。ツナちゃん。助けてほしい」
「ハサミ・・・ううん。包丁かナイフみたいなのある?」
「右の部屋が台所。包丁はそこにある」
「待っててね」
ツナちゃんが台所の部屋のドアを開く。
「あ、ツナちゃん言い忘れてたけど、中に妹が・・・」
「きゃあ!!」
ツナちゃんが腰をぬかして、床に座り込む。
「はじめまして。わたし、お兄ちゃんの唯一にして至高なる妹。契」
「こ、こんにちはっ!?」
「こちらが名乗ったのに、あなたは名を明かさないの?いやらしい女」
「い、いやらしい!?ええと、わ、私、接木 繋です」
「初デートでいきなり彼氏の家に夜這いに来るなんて、およそ品性の欠片も無い女ね」
「誤解だ、ちーさん。ツナちゃんはちーさんに会いに来たんだ。大雨でデートに行けなくなったから、俺の妹に会ってみたいって。それで来たんだ」
「それならばなぜ、そこで尻もちをついて狼狽(うろた)えているの?お兄ちゃんの妹であるわたしを、早く愛でて」
「ご、ごめんなさい。あなた、包丁持ってるから。私、びっくりしちゃって」
「ちーさん。包丁を持っているのか。料理でもしていたのか」
「契は引き裂くことを所望している」
「兄君!?妹ちゃんが包丁を向けて、私に迫って来るんだけど!?」
「あぁ妹よ。ついに俺のロープを切ってくれるのか。いい加減辛かったところだ。助かる」
「もちろんだよ、お兄ちゃん(チッ)」
「兄君!妹ちゃん舌打ちしたよ!」
ちーさんは後ずさりするツナちゃんの手前で90度ターンし、俺に結わえられたロープを切ってくれた。さすがちーさん。優しい妹だ。
「初デートでいきなり宣戦布告しに来るなんて、大した度胸ね。分かった。わたし、引崎 契が受けて立つ」
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