3話 雨を愛する
ザァザァという激しい音に目を覚ます。
(嘘だろ、勘弁してくれよ。天気予報は曇りだったじゃんよ)
窓に体当たりしてくる雨粒。道路を歩く紺や深緑色の傘。どんな人が差しているのか。2階からは分からない。
(初デートの日が大雨とは)
少し程度なら傘を差して無理矢理出かけられなくもないが。これでは・・・。
すぐに彼女にLINEを送る。
――今日、どうする?
返信は早い。
(・・・おっとぉ!?)
俺は部屋を出て、うさぎ柄のプレートの付いた隣の部屋をノックする。
「ちーさん。兄である」
「お兄ちゃんの声だ。契は、お兄ちゃんの入室を許可する」
ちーさんの部屋に入る。あれ、おかしいな。心なしか部屋が暗い・・・ぞ?
「・・・・・。」
「お兄ちゃん。恥ずかしいよ。そんなにちーさんを見つめても何も出ないよ」
「兄は、窓辺にある物体の説明を求める」
「見れば分かるでしょ。逆さてるてる坊主」
逆さてるてる坊主が50人ほど吊るされている。
「いちいち人に聞かなきゃ分からないようじゃダメだよ、お兄ちゃん。もっと見て。そして考えてほしいの」
「ふむ。熟慮した」
「して、お兄ちゃんの回答は?」
「・・・ちーさんは雨が好き」
「お兄ちゃんも吊るしてあげる?」
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