第9話 恋のはじまり
「健太さ〜ん! おまたせしました〜!」
「おっす! てか、俺たち同級生なんだから、“さん”付けはやめてよ。俺も『ナオ』って呼ぶからさ」
「じゃ、じゃあ、健太……くん」
「“くん”は余計!」
「急には無理! 今はこれが限界です!」
「はいはい。じゃあ今日のところはそれで我慢してやるよ」
「ありがとうございます! で、今日はどこに行くんですか?」
「ん~、特に決めてはないけど、ナオはどこか行きたいとこある?」
「私も特には……、あっ! 海!」
「海!? さすがにちょっと今日は無理かな~」
「そ、そうですよね……。ごめんなさい」
「いや、いいんだけどね。てか、ナオは海が好きなの?」
「う~ん、好きっていうか、海に行くと不思議と心が温かくなるんです」
「そっか……。じゃあさ、今度のデートは海に行こう!」
「えっ!? 次もあるんですか!?」
「えっ!? 今日だけなの!?」
「アハハッ! いえ、次のデートも楽しみにしてますね!」
「じゃあ今日はどっかで飯食おっか!」
「はい! そうですね!」
◇ ◇ ◇
――コツコツコツ……
「はぁ~、美味しかった! 次はどうしますか?」
「とりあえず、公園に行って少し散歩でもしよっか」
「いいですね〜!」
◇ ◇ ◇
――コツコツ……
――コツ
「……? どうかしましたか?」
「なぁ、手、繋いでもいい?」
「えぇ!? 手ですか!?」
「……イヤ?」
「イヤじゃないですけど……、男の人と手を繋ぐの初めてなので……」
「ほら、手、貸して?」
「は、はい……」
(不思議。健太くんの手、落ち着くなぁ……)
「おっ! レンタサイクルがあるじゃん!」
「へぇ〜、色んなタイプの自転車があるんですね! 面白そう!」
「ほら、二人乗り用もあるぞ! 一緒に乗ろうぜ!」
「これ二人でこぐんですか!? できるかなぁ……」
「俺に任せとけ! ナオは落ちないよう後ろでしっかりハンドル握っとけよ!」
「は、はい!」
「うわっ! 自転車とかかなり久しぶりに乗るな〜! ナオ、いいか? 行くぞ〜!」
「う、うん……」
(あれ? なんでこんなに懐かしい気持ちになるんだろう……)
◇ ◇
その後、私たちは何度かのデートを重ね、急速に仲を深めていった。
彼の優しい笑顔を見ていると不思議と胸がギュッと締め付けられた。この胸の痛みを『恋』と呼ぶのだろうか?
健太くんと恋がしたい……。私の心がそう訴えている。
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