第6話 二人だけの約束
「はぁ~、楽しかった~!」
「ナオ、ごめん。一本電話してくる」
「うん、い~よ~」
◇
――トゥルルル……
『おばちゃん、健太だけど。連絡するって言ったのに遅くなってごめん』
『うん、もう病院は出た。ナオの手紙読んだ? 先生たち怒ってる?』
『心配かけてほんとにごめん。戻ったら俺が代わりに怒られるから、ナオのことは叱らないでやって』
『今? 今は隣町の海にいる。うん、ナオの体調は大丈夫そう』
『……ねぇ、おばちゃん。頼む、もうしばらくナオと一緒にいさせて……』
『ありがとう……。じゃ、また連絡する』
――ピッ
◇
「わりぃ、電話長引いた」
「全然いーよ!」
「あっ、そうだ! ついでに今晩泊るホテル予約しといたから」
「えぇぇぇ!? ホ、ホテル!?」
「言っとくけど普通のホテルだからな」
「そ、そんなの当たり前でしょ!?」
「あっ、今なんか期待しただろ~」
「はっ!? そんなわけないでしょ!?」
「ハハッ! お前、顔真っ赤だぞ~」
「う、うるさいっ! バカッ!」
――ゴーン、ゴーン……
「ん? これ何の音?」
「あぁ、さっきこの近くにチャペルがあるの見えたから、そこの鐘の音だろ」
「チャペル!? わ~! そこ行ってみたい!」
◇
「うわ~! キレ~イ!」
「おっ、中は結構広いんだな」
「結婚する人たちがここで一生の愛を誓うんだね~! いいなぁ~!」
「俺たちも誓っとくか?」
「えっ? 何を?」
「その愛とやらを」
「はぁ? 何言ってんの~? 私たちただの幼馴染じゃん!」
「俺は幼馴染とは思ってねーよ」
「……え?」
「俺、お前のことずっと好きだった。いや、これからもずっと好きだ」
「健太……」
「ナオ、大人になったら俺と結婚しよ」
「ム、ムリだよ……。私、もうすぐ健太のことも忘れちゃうんだよ?」
「お前が何を言っても俺はナオのことが好きだし、ずっと一緒にいたい。ナオはどうなんだ?」
「私も健太のことが好き。大好きだよ。でも……」
「じゃあ全く問題ないな!」
「健太は本当にそれでいいの?」
「俺はナオ以外考えられない。それはナオも同じだろ?」
「うん」
「なぁ、ナオ。まだ式は挙げられないけど、誓いだけは立てていいか?」
「誓い?」
「ナオ、もしお前が俺を忘れたとしても、俺はナオのことを生涯愛し続けることを誓います。だから将来俺と結婚してください」
「……はい、喜んで」
「じゃあ目つぶって」
「ナオ……、俺たちの誓いのキスだけはどうか覚えてて……」
◇ ◇
健太、ありがとう。でもね、もし私が本当に健太のことを完全に忘れちゃったら、健太も私のことなんか忘れてよ。そして私以外の誰かと恋をして、必ず幸せになってね。健太の幸せをいつでも願ってる。
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