第6話 二人だけの約束

「はぁ~、楽しかった~!」


「ナオ、ごめん。一本電話してくる」


「うん、い~よ~」




――トゥルルル……


『おばちゃん、健太だけど。連絡するって言ったのに遅くなってごめん』


『うん、もう病院は出た。ナオの手紙読んだ? 先生たち怒ってる?』


『心配かけてほんとにごめん。戻ったら俺が代わりに怒られるから、ナオのことは叱らないでやって』


『今? 今は隣町の海にいる。うん、ナオの体調は大丈夫そう』


『……ねぇ、おばちゃん。頼む、もうしばらくナオと一緒にいさせて……』


『ありがとう……。じゃ、また連絡する』


――ピッ




「わりぃ、電話長引いた」


「全然いーよ!」


「あっ、そうだ! ついでに今晩泊るホテル予約しといたから」


「えぇぇぇ!? ホ、ホテル!?」


「言っとくけど普通のホテルだからな」


「そ、そんなの当たり前でしょ!?」


「あっ、今なんか期待しただろ~」


「はっ!? そんなわけないでしょ!?」


「ハハッ! お前、顔真っ赤だぞ~」


「う、うるさいっ! バカッ!」



――ゴーン、ゴーン……


「ん? これ何の音?」


「あぁ、さっきこの近くにチャペルがあるの見えたから、そこの鐘の音だろ」


「チャペル!? わ~! そこ行ってみたい!」




「うわ~! キレ~イ!」


「おっ、中は結構広いんだな」


「結婚する人たちがここで一生の愛を誓うんだね~! いいなぁ~!」


「俺たちも誓っとくか?」


「えっ? 何を?」


「その愛とやらを」


「はぁ? 何言ってんの~? 私たちただの幼馴染じゃん!」


「俺は幼馴染とは思ってねーよ」


「……え?」


「俺、お前のことずっと好きだった。いや、これからもずっと好きだ」


「健太……」


「ナオ、大人になったら俺と結婚しよ」


「ム、ムリだよ……。私、もうすぐ健太のことも忘れちゃうんだよ?」


「お前が何を言っても俺はナオのことが好きだし、ずっと一緒にいたい。ナオはどうなんだ?」


「私も健太のことが好き。大好きだよ。でも……」


「じゃあ全く問題ないな!」


「健太は本当にそれでいいの?」


「俺はナオ以外考えられない。それはナオも同じだろ?」


「うん」


「なぁ、ナオ。まだ式は挙げられないけど、誓いだけは立てていいか?」


「誓い?」


「ナオ、もしお前が俺を忘れたとしても、俺はナオのことを生涯愛し続けることを誓います。だから将来俺と結婚してください」


「……はい、喜んで」


「じゃあ目つぶって」




「ナオ……、俺たちの誓いのキスだけはどうか覚えてて……」



◇ ◇


 健太、ありがとう。でもね、もし私が本当に健太のことを完全に忘れちゃったら、健太も私のことなんか忘れてよ。そして私以外の誰かと恋をして、必ず幸せになってね。健太の幸せをいつでも願ってる。

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