第4話 不安な日々

「はぁ……。クラスのみんなに会いたいな……」


「……ハハ、でももうほとんど名前思い出せないや……」



—―ガラガラ……



「おーっす! 見舞いに来てやったぞ~」


「あっ、健太」


「調子どうだ?」


「バッチリだよ~」


「ふ~ん……」


「ねぇ健太、部活は?」


「ん? 急に休みになった」

(嘘つき……。私のとこ来るために部活休んでるんでしょ?)


「せっかくの部活休みなんだから、私のとこばっか来なくていいよ? たまには友達と遊びなよ。それとも私に会えなくて淋しいのかなぁ? な~んちゃって……」


「……あぁ、淋しいよ」


「……えっ? それって……」


「ふんっ! 毎朝起こしに来る口うるさい暴力女がいないからな! 淋しくて仕方がねーわ!」


「はっ!? 何それ!?」


「ハハッ! 元気出たみたいだな!」


「もうっ! 健太なんてキライ!」


「はいはい。ほんとは好きなくせに~」


「ベーっだ!」



「――じゃ、俺そろそろ帰るわ」


「うん……」


「あっ、そうだ! 来週は試合前で練習休めないから、しばらくここには来られないかも。ごめん」


「わかった。私のことは気にしなくていいから、練習頑張って!」


「おうっ。ナオは体調良いからってあんま無理すんなよ」


「うん、ありがと」



—―ガラガラ……バタン



「本当にありがとう……。健太、大好きだよ」



◇ ◇ ◇


「……痛っ! はぁはぁ……。もうヤダ……」



—―ガラガラ……


「あっ、ママ……。うん、また頭痛が……。でももう治まったから大丈夫」


「あ~、ほんと大丈夫だからそんな顔しないでよ~! で、なに?」


「ん? 『最近健太の顔見ないね』って、‟健太”って誰?」


「幼馴染の健太……?」



「……あっ。ハハ……最悪。私、健太のこと忘れかけてた……」

(神様ひどい……。私から健太の記憶まで奪っちゃうの?)



◇ ◇ ◇


「先生、私の身体の中で一体何が起こってるんですか?」


「記憶域を司る箇所の脳波に異常……。原因は不明……」


「……はい。確かに読み書きなどに影響は出てないです。忘れていくのは人の名前や場所などの記憶だけなんです……」


「……先生、私、これからどうなっちゃうんでしょうか?」


「えっ……。このままだと近いうちに記憶を全て失う? そ、そんな……」



◇ ◇


 それからはお医者さんの言うとおり、私の頭の中から日に日に大切な記憶たちが消えていった。このまま全てを忘れてしまうなんて怖い……。

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