第6話 魔王様、祝福する。

 ……聖女はほんわかとした印象で、誰にでも優しかった。

 きっとそんな彼女が嫁となったら……幸せかも知れないと心のどこかで思っていた。

 けれどそれはもう実現はしない。……そう思うと涙が出てきた。


 ガチャ、と扉が開き魔王が入ってきた。

 その手には水晶玉が握られ……あれは、通信用魔道具?


「聖女~。よかったのじゃ~、愛でたいのう。本当に愛でたいのう♪」


 ボフンとロリっ子に変化し、尻尾を振りながら近づきながらフォクスロリアは嬉しそうに通信相手に声をかける。

 相手は……聖女だったらしい。しかし声は通信している本人にしか聞こえないようで嬉しそうに語りかけるフォクスロリアの声しか響かない。

 けど、何が愛でたいんだ。あんな男と結婚をさせられて、しかも今頃……!


「――ずっと待っておったのじゃろう? え? 当りまえじゃと?

 はぁ~、ラッブラブじゃのう。じゃが先ほどはすまぬな。

 愛し合っておるというのに、嫌そうな顔をさせてしもうて……」


 ???

 いったい何を言っているんだ?

 困惑が頭の中を駆け巡る。

 しかし、言いたいことを言い終えるとフォクスロリアは通信を終了させた。

 そして飛び込むように彼女はベッドに潜り込み、いつものように隣に寝転ぶ。


「んふ~、勇者よ。やはり愛し合ってる者たちがひとつになるというのは素晴らしいのう。

 お主は眠っているから聞こえぬじゃろうが、あの聖女たちは親子ほど年が離れておるが愛し合っておった。

 じゃが、聖女に選ばれたためにあの男は冤罪を着せられ追放されたのじゃ。

 それをわしが保護し、匿っておった。

 お主が倒れたと聞いた聖女は諦めた目をしておったが、死んだと思われていた恋人と再会したときは涙を流しておったぞ……。

 まったく、人の国の王め……相手のことなど考えぬとは、為政者として失格じゃろうが」


 頬を膨らませながらフォクスロリアは囁く。

 その姿を見て、自分がしていたことは正しかったのか……ぐらつき始めていた。

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