第2話 魔王様の本性

 ……ここは?


 目が覚めるとベッドだと思う場所に眠らされていた。

 いったいどうしたのかと思ったけれど、魔王によって眠らされたことを思い出す。

 つまりはここに運ばれたのだと理解するも、どう見ても寝室であり……牢屋などではない。

 身体を動かそうとするけれど、指一本さえ動かない。意識はしっかりしているのに。

 運が良いのか魔王の魔法に抵抗して、意識だけは取り戻すことが出来たようだった。


 ――ガチャリ、と扉が開く音が聞こえる。


「くくく、ようやく。ようやくじゃ……」


 魔王フォクスロリアだ。

 声でそれに気づくも、何も出来ず……ジッとしていることしか出来ない。

 すこしでも目を開けることが出来れば。そう思いながら目に力を込めると……ほんの微かにだが瞼は上がった。

 ……そこには、下着のみを身に着けたフォクスロリアがいた。


 刺繍が施された黒く所々に透けた素材が用いられた下着。

 それに身を包んだフォクスロリアは扇情的で、男としての本能を刺激した。

 そして気づく、ここはフォクスロリアの……魔王の私室だということに。


「ああ、勇者。勇者……。わしは、わしはもう……我慢できぬ」


 ギシッ、魔王がベッドに膝をつき、ゆっくりと近づくのが見える。

 女性特有の甘い華の香りが鼻を突き、ごくりと唾を飲み込んでしまいそうだが……体は一切動かないため、唾も出ない。

 そのまま、動けないでいると……魔王は体を乗せた。


 むにゅん、とたわわに実ったおっぱいが胸板に当たる。


 間近に魔王の顔が見え、先ほどの甘い香りがより強く感じられた。

 心の中では心臓がドキドキと高鳴っているけれど、実際に高鳴っているかは感じられない。

 意識だけが覚醒しているだけで、体は止まっているのかも知れない。

 そう思っていると、体を押し付けていた魔王が上半身を起こした。


「はぁ~~ん♥ 勇者のにおいじゃぁ~~~~っ!!」


 どこか甘い声が魔王の口から放たれた瞬間、ドロンッと魔王が煙に包まれた。

 そして、魔王を包んだ煙が消えるとそこには……狐耳を生やし、九つの尻尾を持ったロリっ子がいた。


「はあはあはあはあ、ゆうしゃぁ~♥ ようやっと、ようやっと手に入れたのじゃ~! わしは勇者を手に入れたのじゃ~~!

 ゆうしゃ~、わしずっとこうしたかったのじゃ~。はあはあ、勇者のにおい。勇者のにおい~~♥」


 声を弾ませながらロリっ子が抱き着き、すりすりと胸板へと頬ずりをする。

 先ほどの濃密なまでの華の香りとは打って変わり、ぐりぐりと頬に当たるロリっ子の髪からは……幼子特有のお日さまのような香りが鼻に届くと同時に混乱する。


「ずっと見ておったのじゃ~。はやくわしの元に来てくれって思っておったのじゃ~♪

 もう離さぬ、何があろうとわしはお主を離さぬぞ~~♥」


 ピコピコ動く狐耳、ブンブンブンブンとものすごい速度で揺れる九つの尻尾。

 さらには着用者のサイズ補正が施された黒い下着。

 それを見る限りでも認めるしかいない……。


 目の前のロリっ子が、魔王フォクスロリアだということを……。

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