家に戻った俺は、再度シャワーを浴びた。


服の替えはないし、服だけでもアパートに取りに行こう。


少し不機嫌になった俺はシャワーをさっさと切り上げ脱衣所に出た。


「あ、服」なんと足元に新しい服が置いてあったのだ。


おばあさんかな?気が利くな。


新しく綺麗な服を、当たり前のように着て一度アパートに向かうことにした。


豪邸からボロアパートまで約15分。


アパートに着き、大家さんに鍵を借りた。


二階の角部屋まで歩き、俺の部屋だった場所のドアを雑に開ける。


改めて部屋の中を見渡すとその狭さに驚愕した。


ワンルームで、日当たりも悪く、空気はカビ臭い。


こんな部屋に住んでいたのかと思ったが、豪邸を手にした俺はカビ臭い部屋で独り冷笑を浮かべた。


部屋の奥にあるタンスから洋服を引っ張り出し、ベッドの下に潜り込んでいた黒いリュックに詰め込んだ。


歯ブラシや生活必需品を手提げバッグに入れると結構な大荷物になってしまった。


思い出の物など特にない。


もう二度とここには戻ってこないのだから。


両の手が塞がっていたため、乱暴に足でドアを開けた。


俺は鍵も閉めずにそのまま豪邸へと歩くのだった。

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