豪邸
アパートを追い出されて一日も経っていない今日、俺は豪邸を手に入れた。
こんなことがあっても良いのか。
冗談だと馬鹿にされる前に、おばあさんの出した契約書にサインを書いた。
これでこの家は俺のものだ。
「私と犬は死ぬまではここに住まわせてもらいます、そしてそれまでは二階へは上がらないで下さい。それ以外は好きに使って頂いてかまいません。」おばあさんはそういうと二階へと続く階段を上がっていった。
極端に曲がったその腰は、どこか悲壮感を覚えた。
俺は大の字になり広間に横になった。
なぜ俺にこんな良いことがあるのだろう。
あんなボロアパートなど興味はない。
家具も全て一緒に処分してもらおう。
今日から、この豪邸を堪能するぞ。
俺はこの家の主人だ。
おばあさんは自分がいなくなるまでは二階には上がるなと言っていた。
二階も気になるが、たくさんの部屋の中から、まず気になったのは庭にある物置だ。
異様な雰囲気がするようなそんな気がした。
傘を持ち、庭に出て横開きの戸を開ける。
カビの臭いと埃で、随分開けていないことがすぐに分かった。
「なにがあるんだろう」中を覗くと、壁にカマやクワ、農作業の道具がたくさんかかっている。
不思議と道具に埃は被っていなかったが、それ以外の変わったものはなかった。
「なんだ。お宝の一つでもあると思ったんだけどな。」そう思い物置を出ると、気配を感じた。
俺はとっさに後ろを向く。
なにもない。
なにかいたような。
俺は恐る恐る物置の裏側へと足を進め、物置の角から裏を覗き込んだ。
「わん!」突然の犬の鳴き声に俺は尻もちをついてしまった。
「驚かすな!犬!」大人になってここまで驚いたのはいつぶりだろうか。
お風呂に入ったのに濡れた地面に尻もちをつき、挙句の果てに傘まで落としてしまい、またもやずぶ濡れになってしまった。
あれ、この犬さっきの犬ではないな?
突然現れた犬は姿こそ似ているが、酸素ボンベはつけていない至って健康そうな犬だった。
もしかしたら何匹もいるのかな。
鬱陶しいな。
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