第3話「出会い」
アランはクマのぬいぐるみに変身していた。ボタンの眼、つぎはぎだらけの身体。背丈は元の身長と変わらないが、手には指が無くモコモコなので剣も握れない。愛剣“ドーンレス”も、逃げる過程でどこかに落としてしまった。
「ミシェルを。ミシェルを助けに戻らねば。でもこの身体ではどうにもならぬのだ。とりあえず町に戻って、作戦を練るのだ」
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「うわっ、クマの魔物だ!?でかい!?」
「ちょ、違うのだ!某なのだ!アラン=マスキールなのだ!」
「兵士を呼べ!魔物が来たぞ!!」
「やっぱり、幻惑の魔女が復活したって噂は、本当だったんだ!」
「きっと魔女がよこした魔物だ!」
「聞いてほしいのだ!魔女にやられてこんな姿になってしまったのだ!」
「火だ!炎系の呪文使える魔法使い呼んで来い!」
「違う!違うと言っているのだぁ!」
町の門番たちに追われながらも、アランは命からがら逃げおうせた。
隠れる場所の多い森の中で独りぼっち。見知った、慕ってくれた町の人々に命を狙われた。アランは寒々しい気持ちになった。
「町を守りたかったのだ。ミシェルを助け出したいだけなのだ。某は、剣士アラン=マスキールなのだ」
「・・・えい!ほっ!えい!ほっ!」
ふと声が聞こえてきて、アランは顔を上げる。ミスタービャ橋の近くで、ベージュ色の髪をおさげにした少女が、一人で剣を振るっている。歳は16くらいだろうか。服装は普段着のようだが、繊細な柄が端々に見え、少し身分が高いような印象だ。
「誰だろう。初めて見る顔なのだ」
「・・・えい!ほっ!えい!ほっ!」
「あ、あのぉ・・・」
「う、うわーっ!クマ!?クマのぬいぐるみがしゃべってるー!?」
「落ち着くのだ!決してあなたに危害を加えるつもりはないのだ!助けてほしいのだ!どうか某を、助けてほしいのだ!!」
「・・・へ?」
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「ふむふむ。そのミシェルとか言う友達を助けたいけど、町の人に魔物と誤解されてしまった・・・と」
「信じれくれるのだ?」
「もちろんです!困っている人を助けるのは、高貴なる者の務め!良いでしょう!このわたくしが、アラン様の助けとなりましょう!」
「おお。心強い!なんとお礼を言ったらいいか!」
「礼には及びません。その魔女というのは、わたくしの両親の仇でもあるのです。だから、わたくしの方からもお願いしたい。アラン様、わたくしのことを助けてください!」
「なんと。それは」
「レイラです」
「アラン=マスキールなのだ」
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