第3話「出会い」

 アランはクマのぬいぐるみに変身していた。ボタンの眼、つぎはぎだらけの身体。背丈は元の身長と変わらないが、手には指が無くモコモコなので剣も握れない。愛剣“ドーンレス”も、逃げる過程でどこかに落としてしまった。

「ミシェルを。ミシェルを助けに戻らねば。でもこの身体ではどうにもならぬのだ。とりあえず町に戻って、作戦を練るのだ」




********************


「うわっ、クマの魔物だ!?でかい!?」

「ちょ、違うのだ!某なのだ!アラン=マスキールなのだ!」

「兵士を呼べ!魔物が来たぞ!!」

「やっぱり、幻惑の魔女が復活したって噂は、本当だったんだ!」

「きっと魔女がよこした魔物だ!」

「聞いてほしいのだ!魔女にやられてこんな姿になってしまったのだ!」

「火だ!炎系の呪文使える魔法使い呼んで来い!」

「違う!違うと言っているのだぁ!」


 町の門番たちに追われながらも、アランは命からがら逃げおうせた。

 隠れる場所の多い森の中で独りぼっち。見知った、慕ってくれた町の人々に命を狙われた。アランは寒々しい気持ちになった。

「町を守りたかったのだ。ミシェルを助け出したいだけなのだ。某は、剣士アラン=マスキールなのだ」


「・・・えい!ほっ!えい!ほっ!」


 ふと声が聞こえてきて、アランは顔を上げる。ミスタービャ橋の近くで、ベージュ色の髪をおさげにした少女が、一人で剣を振るっている。歳は16くらいだろうか。服装は普段着のようだが、繊細な柄が端々に見え、少し身分が高いような印象だ。

「誰だろう。初めて見る顔なのだ」


「・・・えい!ほっ!えい!ほっ!」

「あ、あのぉ・・・」

「う、うわーっ!クマ!?クマのぬいぐるみがしゃべってるー!?」

「落ち着くのだ!決してあなたに危害を加えるつもりはないのだ!助けてほしいのだ!どうか某を、助けてほしいのだ!!」

「・・・へ?」




********************


「ふむふむ。そのミシェルとか言う友達を助けたいけど、町の人に魔物と誤解されてしまった・・・と」

「信じれくれるのだ?」

「もちろんです!困っている人を助けるのは、高貴なる者の務め!良いでしょう!このわたくしが、アラン様の助けとなりましょう!」

「おお。心強い!なんとお礼を言ったらいいか!」

「礼には及びません。その魔女というのは、わたくしの両親の仇でもあるのです。だから、わたくしの方からもお願いしたい。アラン様、わたくしのことを助けてください!」

「なんと。それは」

「レイラです」

「アラン=マスキールなのだ」

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