それぞれの過去と思い 二十五話
「聞きました?サイジさんのギルドに少女が一人属しているらしい」
「へえ、相当な実力なんでしょうね」
「すみません、私もご一緒してもいいですか?」
「君は…」
「私はルーミです」
ジーナがライの元へ行かなかったのはライを危険に合わせたくなかったんだろう。
今のジーナは昔のジーナではない。虫を殺せないくらい、優しい人物では…。
「その少女の名前とかは知ってるんですか?」
「確か、ディー・シェーネ・メルダリン。みんなメルダリンと呼んでいるらしい」
「ディー・シェーネ・メルダリン…」
通称美しき暗殺者。これがジーナの正体。そんなジーナをライが知ったらどうなるのだろう。
受け止めるのか、それとも止めるのか。けれど、ジーナにも何かしら理由があるのだろう。
「ありがとうございます。またいつか会う日まで」
静かにその場を去る。ふと、中庭に目がいく。ライが椅子に座り泣いている。
駆け寄って話を聞いてあげたい。けれど今の自分ではどうにもできない。出来ることとすればそっとしといてあげること。
ふと、目がいったのは廊下。廊下の奥に人が立っているのがわかる。窓の外を見ながら、ガラスに手を触れていた。
すぐに話しかけに行った。
「すみません」
「……あなたは…」
「えっと、ライさんと同じギルドに所属しているものです」
「ああ……」
「ライさんの所へ戻りたくないんですか?」
直球だったか。それでも聞きたい。この絡まり絡まった話を終わりにしたい。
「そりゃあ、戻りたいわ。だけど、今の私がライのところに戻ったら危険な目に合わせてしまう……。それに、私はライと一緒にいてはいけない人間。ライに私の正体がバレたら、あの子は絶句してしまうよ…」
目から透明の涙が落ちるのがわかる。それは、床に敷かれていた絨毯に落ち、絨毯の色は濃くなった。
「暗殺者、なんですよね」
「……え?」
「今のあなたの呼び名はディー・シェーネ・メルダリン。美しき暗殺者、という意味ですよね」
ジーナ、いや、メルダリンは一瞬驚いていたがフッと笑みを浮かべて答える。
「ええ、そうよ。私の今の名前はディー・シェーネ・メルダリン。まあ、名前と言ってもギルド内での呼び名だけどね。いつもはメルダリンって呼ばれてる」
必死に笑みを浮かべているのがわかる。
「ジーナ、という名前はもう何年も前に捨てたわ。復讐を決意した時から」
「復讐?」
「うん。私が暗殺者になった理由はサイジのこともあるけど、一番の理由は私の姉を殺した人に復讐するためよ」
「あ…ね…?」
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