それぞれの過去と思い 二十話

「賭け…ですか?」


「ああ、よくあるカジノさ。どうだい?一度やってみないか?」


カジノか。前世でよくやったなぁ。元々賭け事が大好きだし、勝った時の爽快感は忘れられない。一人悦に浸っていると、男の人はキョトンとルーミを見ていた。


「あ、すみません。やります!ぜひやらせてください!」


「そうか。私の名前はクリストンだ」


「私はルーミです」


「じゃあ、着いてきてください。ルーミ」


ルーミはクリストンの後を追った。そんな二人をイリスはジーッと見ていた。


「まず最初は一人にこのチップが五十チップ渡されます。このチップ一つで十ドル分です。ですので、あなたは手持ちは五百ドルです。ここには色々とありますが、まず最初にあれをやってみてはいかがですか?」


クリストンが指を指したのはルーレットだった。前世でも見たことがある。赤色と黒色の数字が交互に書かれていて、ルーレットを回す。赤か黒かどちらがでるか当てるゲームだ…ったはず。


「見たことあるかい?」


「はい。ルーレットを回して黒か赤か当てるゲームですよね!」


「よく知ってますね。それと、ここでは、出た数字×最初にお金を出した分もらえます。赤か黒か当てたらお金はもらえますよ。緑はもらえません。それじゃあまず一チップでやってみてはどうですか?」


「はい!」


ルーミは早速チップだす。


「黒で!」


ルーレットを回す。ここのワクワク感がたまらない。ドキドキして楽しいのだ。ジーッとルーレットを見る。


「あ、黒の十五ですね。御見事です」


「やったー」


嬉しい。これだから楽しいのだ。まあ、ハマったら抜け出せないから程々にしておこう。十五チップもらい他のところを見に行く。目に入ったのはトランプだった。


「ババ抜きですね。やってきたらどうですか?」


「やります!」


「お嬢ちゃん。私とやりますか?」


ルーミに話しかけてきたのはお腹がよく育っているおじいさんだった。


「はい。お願いします」


「賭け金は君が決めていいよ」


「それじゃあ、最初なので三チップでもいいですか?」


「ああ、構わないよ」


男の人がトランプをシャッフルする。素早くルーミとおじさんにとらんを渡す。手慣れている。


ババ抜きは順調に進んでいた。何度かババ抜きを取ってしまったので焦ったけれどなんとか勝てた。


「はは、やるね。お嬢ちゃん」


「ありがとうございます」


「ルーミ、君ババ抜き得意なのか?」


「あー、少しだけやったことがあったので」


前は友達と休み時間によくやっていたから…。そんなことは言えないのでどうにか誤魔化しておく。


「それじゃあもう一回やりましょう。私が賭け金を決めますね?」


「はい。お願いします」


「それじゃあ、三十チップで」


その場で鑑賞していた人々が一瞬驚く。まあ、普通はそれくらい賭けるか。やってみよう。


「わかりました。三十ですね」


「大丈夫かい?ルーミ」


「はい。大丈夫です」


ニコッと笑いかける。けれどクリストンは心配そうに見ている。


「はい、勝ちだ」


おじさんがパラっと机に二枚のトランプを置く。ルーミは負けた。三十枚のチップを渡す。これで残りのチップは三十七残っている。


「それじゃあ、もう一度やりませんか?」


「ああ、いいぞ。賭け金は君が決めな」


「ありがとうございます。あの、クリストンさん。失礼なんですが、少々お金を借りてもよろしいですか?」


「え?ああ、いいぞ」


クリストンは持っていた分の全部をくれた。クリストンはルーミと会う前にためたのか百チップ持っていた。ルーミは驚く。


「こんなにいいんですか?」


「ああ、君に託そう」


「ありがとうございます。それじゃあ、賭け金は私の全てのチップ、一三七チップで」

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