それぞれの過去と思い 十話
サイジと名乗る男はすぐに村の人々に好かれ、信用された。
みんなはさいはとても優しく、平民の私たちにも差別することなく関わってくれた。
私とジーナもサイジという男を最初は信用していた。
ある日サイジはジーナの家にやってきてジーナのお母さん見てこう言った。
「医者料はどれくらいかかるんだ?」
「……分かりません。ですが、前医者を尋ねた時に言われたのは約5万ドルです」
サイジは頭を抱え
「5万ドルか……。結構かかるな……」
一瞬期待していた自分が馬鹿だった。5万ドルものお金を出してくれるわけないだろう。
「……君、ちょっと話をしよう」
サイジはジーナを指さした。私も一緒に行くと言ったけれど、ダメだった。仕方なく、ジーナのお母さんの隣に座って待っていた。
一時間後ジーナとサイジが戻ってきた。ジーナは浮かない顔をしている。サイジはその後すぐに帰っていった。
すぐにジーナに何を聞かれたか聞いたが、答えてくれなかった。
その後だった。ジーナが消えたのわ。
玄関先にあったお金と手紙を読んだ時には疑っていなかったが調べていくうちにサイジを疑っていった。
しかし、サイジの有力な情報が見つからないまま一年が経過していた。
「そして今何となくわかった。ジーナの後ろにはサイジという男がいると」
「……なんでそう思う」
「ジーナのお母さんの治療費が5万ドルというのを知っているのはジーナとわたしとサイジしかいない。私が考えたのは、ジーナは自分の命をサイジに渡してその見返りとして5万ドルをもらったんだと思う。家の前においてあった袋には、きっちり5万ドルが入っていたから」
「…まあ確かにそのサイジってやつは怪しいな。探ってみる価値はある。だがな、それを俺たちに話せよ。いつまでも一人でどうにかしようとするな」
イリスが厳しくライを叱る。滅多に見ない光景に驚くルーミ。
「…わかった。これからは何かあったら話すようにするわ。ごめんね」
イリスはふんっと言い先に歩いていってしまった。
真っ暗な地下に冷たい空気が部屋の中に漂う。外との気温差が激しい。
長い螺旋階段をたんたんと歩いていく。一つのドアが現れる。
その扉をゆっくりと開けると暗闇の中に廊下が続いていた。左右見渡すと何個もの扉がある。
その一番奥の右の部屋の前に立ち、ノックする。
「入れ」
冷たく低い声が聞こえてきたら、中へと入る。そこにはソファーに座りながら紅茶を飲んでいる男とその後ろにガタイのいい男が二人いる。
「何か用かい?」
「……なんで私をあそこに送ったんですか?」
「いやぁ、面白そうだと思ってね」
「……」
「いいじゃないか、再会できて」
「……あの子に手を出さないでください」
「それは、僕が決めることさ」
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