それぞれの過去と思い 九話

「……仲間が来る……今日はここまでだ。次会った時は手加減しない。そして、このことを誰かに話したら……お前らの命はないと思え」


思い切り三人を睨みムーンは去っていった。ライはムーンが去っていったあと、ドサっとその場で崩れた。


「ライ……!……ジーナってもしかして……ライが昔仲の良かった子のこと?」


ライの傍にしゃがみ聞く。けれどあの子は亡くなってるんじゃ。


訳が分からない。


「……本当は考えたくなかった……ずっと心の中で違うと言い聞かせていた。だけど…さっきあの子を見て分かった。あの子はジーナよ…。あの子は……ジーナは、スキルを二つ持っていたの。変装と想像のスキル。そして、ジーナはとっても記憶力が良かった。館でおばさんの話を聞いた時から少し疑っていたの……」


「…なんでそれを俺たちに言わなかったんだ」


「…まだ……確信がなかったから」


「……一旦ここを離れよう。もしあの子の言う通り仲間が来たら危険よ」


ルーミがライの手を取り立ち上がる。ライはスキルを使える状態ではないので歩いて帰ることにした。


「……ごめんね…」


「いいの、大丈夫よ。……ライは色々と抱え込んでいたのね。気づけなくてごめんね」


「ううん。ルーミのせいじゃない。これは、私とあの子の問題。あの子はかならず私が止める」



胸に手を当てて誓う。


けれどむこうはジーナではないと言っていた。それに、あの子は亡くなったんじゃなかったの?ライは亡くなっていないことも分かっていたの?


ライはどこまで予想しているの?


次々に疑問がおもい浮かぶ。今聞いたところで、ライは話してくれないだろう。


「お前はどこまで分かっているんだ?」


ルーミの思っていることをイリスが聞いた。


イリスもライはまだ何か隠していると分かったのだろう。


「……なんにも…分かっていないわ」


「とぼけるなよ。あんたは、あいつがどうしてあんなことをしているのか分かっているんだろ?なんで隠すんだよ。あいつは、人を殺している殺人鬼なんだぞ」


イリスがきびしく問い詰める。最後には鋭い言葉も花った。ライは唇を噛んでイリスを見た。


「あの子は……あの子は殺人鬼なんかじゃないわ!だって…あの子は…虫も殺せない本当に優しい子だもの!」


「だったら、騎士の人達やギルドの人を消したのはだれなんだよ」


「……あの子と出会って数ヶ月経った頃、ある男の人が村を訪れた。清楚な服を着た女の子と一緒に。男の人はお金持ちでそこの村にお金を寄付してくれた。みんなその男の人に感謝していたわ。とても優しい方で誰にでも気軽に話しかけてくれた。その男の名はサイジ」

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