それぞれの過去と思い 一話

「え?じゃあチュラさんがオースタのお母さん、マスターを攫ったってこと?」


「ああ、けれど俺が出した結論はチュラがさらったのは事実だが、チュラ本人ではないってことだ」


「え?それって……どういうこと?」


ルーミのような頭の硬い者には何を言っているのか理解できない。ライは理解したようでイリスに言った。


「チュラさんに化けた他の誰かがマスターを攫った……ってことでしょ?」


「ああ、それが館でおばさんが言っていた想像のスキルを持っている少女だと俺は思っている」


イリスの言葉には自信があった。ライは納得はしている。ルーミは頭にはてながでていた。


けれどお構い無しにライは話を続ける。


「うーん……。イリスの言っていることは一理あるかもしれないわ。けれど、3ヶ月前にチュラさんとマスターが一緒に出かけていて、その日にマスターが居なくなったっていうのは分からないわよ?何日にマスターが消えて、何日にチュラさんとマスターが出かけていたのか調べないとまだそれが事実かは分からないわ。もし、その日が合致していたらイリスの言っていたことが合っている可能性が高いわ」


「ああ、明日それを調べるつもりだ。チュラにも警戒しておけ。いつ偽物と本物になっているか分からないからな」


「私も調べておくわ。オースタさんにも明日聞いておく。チュラさんもね」


話し合いが終わりルーミとライは部屋に戻った。


「なんか色々と騒がしいね」


ボソッとルーミが言う。館で見た写真に移る女の子。あの子はどうして魔物を作るのだろう。


そしてどうしてマスターをさらったのだろう。今、マスターはどうしているのだろう。


「ねえライ。想像のスキルを持つ女の子は他のスキルも持ってるのかな」


「え?」


「チュラさんに化けれるってことはその子は変装とかのスキルを持ってるのかもね。そうじゃなきゃチュラさんと親しい関係にあったマスターがチュラさんを見間違えるわけないしね。相当完璧に化けてたのかも」


「……たしかに…変装のスキルか。そしたら相当手強い相手よ」


顔を歪ませて言う。


確かに。もしそれが誰にでも変装ができるスキルだとしたら街のどこかで誰かに化けているのかもしれない。


もしかしたらもう、出会っているのかもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る