カフェの危機を救え! 八話

ライが話し終えた時みんなは黙りこくっていた。


どれだけ苦しかったのだろう。大事な友達が母親の病気を治すためにお金だけ残して消え、見つけたと思った時にはもう喋ることができなくなっている。


ルーミは前の世界にいた頃のことを思い出す。けれど、思い出せることはなかった。


「……ごめんなさい。思い出させちゃって……」


「ううん。大丈夫よ。もう未練はない、といったら嘘になるけど、あの子が命をかけて守りたかった人を守れたからあの子のために少しでも役に立ったと思うと嬉しいんだ」


そんなことを言っても心は嘘をつかない。ライの目から数滴涙がこぼれ落ちた。ルーミは近くに行き、レイの背中を摩った。


ライは大粒の涙を流して崩れた。


今までどんな思いだったのだろう。ずっと一人抱え込んで辛かっただろう。


「ライは悪くないよ」


今はそれくらいしかかける言葉がなかった。


「……パンケーキ、焼き上がりました」


チュラが竈から焼きたてのパンケーキを取り出す。それを皿に盛り付ける。一枚はオースタにもう一枚はライに。


「……美味しい…」


「……これだ……これがお母さんがいつも作ってくれていたパンケーキです!」


オースタは嬉しそうにパンケーキを口に放り込んでいった。


ライは無言でパンケーキを食べている。


「これでカフェも回復できる…!ありがとう!チュラさん!」


「いえいえ。力になれて嬉しいです」


「あのチュラさん。パンケーキ以外にも色んな物を作ろうと思うんだけど手伝ってくれないかな、?あ、ムリだったら全然大丈夫です!」


「え?!逆にいいんですか?!喜んでお手伝いします!」


「はい!ぜひ!」


オースタの顔には次第に笑顔が出てきた。ライも落ち着きを取り戻し


「私達もできる限りお手伝いしますよ」


「私もお菓子作りは得意な方ですよ」


「ありがとうございます」


その日はオースタの家に止まらせてもらうことになった。チュラは家に帰りまた明日来てくれることになった。


オースタが3人を部屋に案内してくれた。広々とした空間で居心地がいい。イリスは気づくとカフェの椅子に座っていた。


ライが話をしている時に入るのが気まずくここにいた、と言っていた。イリスもオースタに別室に案内してもらった。


夕飯をオースタと一緒に作り、食べ終わると部屋に戻った。イリスが話したいことがある、と部屋に呼ばれた。


「イリス?入るよ」


「ああ」


「話ってなあに?」


「パン屋のやつの事だ」


予想はしていたがまだ疑っているとは。ルーミは溜息をつく。


「チュラさんのこと?まだ疑ってるの?」


「あいつが案内してくれたお店あるだろ?あいつは3ヶ月前に一人で来たと言っていた。その時おばさんが戸惑っていたんだ。俺はその理由を聞いた。そしたら3ヶ月前に来た時は女の人と来てた、と言っていたんだ。そしてさっき、俺はオースタさんのお母さんの写真を見せたんだ。そしたらこの人だって言っていた」


「写真ってどこから持ってきたの?」


「カフェに写真立てがあった。それを見せたんだ」


ライが言う。


「それで、何が言いたいの?」


「マスターがいなくなる日、最後に会ってたのはあいつ、チュラだってことだ」

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