カフェの危機を救え! 七話

「拝啓 ライ様

今まで私のお母さんのために一緒にお金を稼いでくれてありがとう。本当に感謝してる。けれどもう大丈夫。このお金で私のお母さんを助けられるから。だけど、私にはそれができない。だからレイ。あなたが私のお母さんを病院に連れて行って、このお金を使ってお母さんの病気を治してくれない?私は今、村には戻れないから。これが私の最後のお願い。

お母さんには少し長い旅に出るって伝えておいて。心配かけたくないからさ。レイも元気でね。レイと過ごした日々は決して忘れない。レイとあたしは離れていてもずっと友達だよ。またヘマしないようにね。村のみんなにもよろしくね。

さようなら 私の一番の親友さん」


手紙を読んですぐに悟った。彼女は命をかけてこのお金を持ってきたのだと。それがどんな危険なことなのか。


すぐに家を飛び出し彼女を探した。彼女がよく行っていた場所を一つ一つ行って探した。


けれどどこにもいなかった。途方に暮れ、重い足を持ち上げながら帰り道を歩いた。


私は彼女が残したお金を使っていいのか戸惑った。けれど彼女が命をかけてまで守りたかった母親を思うと、いてもたってもいられず、母親を病院へ連れていった。


無事、病気は治せると医師に告げられ入院することになった。嬉しかった。その場に彼女がいたらどれだけ喜んでいただろうか。


私はその後も彼女を探し続けた。


そんなある日あるニュースが話題となった。近くの崖で女の子の死体があったと。顔は判別できないくらいになっていて、身元が特定できていない、と書かれていた。


けれどすぐにわかった。彼女だと。新聞に載っていた写真に写っている女の子が着ていた服が、彼女が着ていた服と同じだった。


唖然とした。なんでこんなことになったのだろう。彼女は自分の命を捨ててまでお金を手に入れたかったのか。


それなら少しでも私に相談してくれても良かったのに。何も言わず消えるなんて。それも一生会えなくなるなんて。


その時の感情は表しきれないものだった。怒りが混み上がってくる。


しかしそれが、彼女の母親への憎しみなのか、それとも彼女がなんにも言わずに死んだからなのか。


その時の自分にはさっぱり分からなかった。


しかし今ではわかる。あの怒りは彼女の母親への怒りでも、彼女への怒りでもない。


彼女を助けられなかった自分だった。


どれだけ悔やんでも悔やみきれなかった。


どう足掻いてももう戻ってこない。自分を責めて、責めて、責め続けた。


今、彼女の母親は必ず娘は帰ってくると信じて過ごしている。


けれどたまにふと思う。彼女の母親は分かっているのだろう。娘はもう戻ってこないと。


それでもずっと娘を待ち続けている。


それはまるで、彼女が母親は絶対に助かる、と信じたように。

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