カフェの危機を救え! 六話
「あの…横から申し訳ないんですが、ここのパンケーキは私とっても大好きでマスターにレシピを教えてもらったことがあるんですよ」
チュラが驚きの発言をした。その一言に静まり返っていたオースタがチュラに思い切り顔を近づける。
「そ、それ教えてください!」
厨房で早速パンケーキをつくる準備が始まる。チュラがテーブルに材料を並べていく。
「さあ作っていくわよ」
チュラは元気よく腕をまくり、ボウルに材料をいれ混ぜる。皿に入れてある材料を手際よく入れる。
ルーミ達は横でチュラの目の前でできていくパンケーキを見ていた。
「そのシロップってなんですか?」
オースタがチュラが手に持っていた瓶を指さす。中には白い液体が入っていた。
「これはスズノ木の樹液よ。スズノ木の樹液はそのまんまでも食べられるの。滅多に食べようとする人はいないけどね。マスターがたまたま見つけて、パンケーキに混ぜたら意外と美味しくできたって嬉しそうに話していたわ」
「……そうなんですか…」
「ええ。……これを型に流し込んで…竈にいれる。これで焼きあがったら完成よ」
「スズノ木の樹液って私も知ってるわ。私も食べたことあるの。甘すぎなくてとても美味しいわ」
ライが瓶を見つめながら言う。
「ライって私に会う前は何をしていたの?」
「色んなことをしたわよ。ある時はお店で働いたり、またある時は冒険に出たり、そこで出会った人と友達になって一緒にお仕事をしたりしたわ」
目をつぶって過去を振り返っていた。そのライの顔は寂しそうに見えた。
「そのお友達は今どうしているの?」
「……亡くなったわ」
「……え?」
亡くなった、ということはもうこの世には居ないということ?どうして?一体何があったの?
次々に疑問が浮かび上がっていく。口の中でずっと我慢しているが、零れそうになった。
「どうして?」
ハッとして口を塞ぐ。質問したのは横にいたチュラだった。ライは俯き語った。
「わたしがお手伝いをしに行った村にその子は住んでいた。その子の母親は重い病気にかかっていたの。母親を治すためには莫大なお金が必要だった。その子は母親を治すために必死になってお金を稼いでいた。けれどその子はまだ子供。お金を稼ぎたくてもたくさんは貯められなかった。私は同情してその子と一緒に働いた。色んな経験をしたわ。けれど母親の病気は悪化していく一方。私たちの稼いだお金でもまだ足りなかった。そんな時だった。朝その子の所に向かおうと家を出ようとすると、ドアの前に大きな袋とその上に手紙が置いてあった。差出人はあの子だった」
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