それぞれの過去と思い 二話
次の日、カフェに行くとチュラが待っていた。昨日夜話したいことを思い出し警戒しつつも話しかけた。
「今日もありがとうございますチュラさん」
「いいのいいの。今日は仕事も休みだし暇だからね!あれ、あの男の子は?」
「イリスは行きたいところがあるみたいで途中から来ますよ」
「あら、そうなの。あ、そうだ。私のお気に入りのお菓子の作り方が書いたレシピ持ってきたんだ。オースタさんが気に入ってくれるといいな」
手に持っている紙を見ながら嬉しそうに言った。今のチュラは本物なのかな、と少し警戒心が薄れた。
「みんな今日もありがとう。早速お菓子を作っていくわ」
「オースタさん!このお菓子とかどうですか?」
すぐさまオースタに駆け寄り紙を見せた。オースターはレシピを見ると笑顔で
「ぜひこれをお店に出したいわ!」
「本当ですか?!やったぁ!」
小さい子のようにジャンプしていた。まるで妹を見ているようだ。
厨房でオースタとチュラはチュラが持ってきたレシピを見ながらお菓子を作り、ライとルーミはルーミの特製プリンを作り始める。
今頃イリスはおばさんにマスターとチュラが来た日を聞きに行った。しかし、そんな明確な日は覚えていないだろうと期待はしていない。
が、聞いて損はない、とイリスは朝早くから聞きに行った。他にも寄るところがあるから遅くなると言われている。
どこに行くかは教えてくれなかった。
「ルーミはプリン好きなの?」
「うん。一番得意なお菓子だよ」
「私はお菓子よりご飯作るの得意だったな」
「へぇ、じゃあ今度ライにご飯作ってもらおっかな!」
「任せなさい!」
二人はたわいも無い話をしながらテキパキとプリンを作っていく。
「あとは冷蔵庫で冷やすだけよ。オースタさん。こっちは終わりました!」
「はーい。こっちはまだ時間がかかりそうだから休憩してもらって大丈夫よ。ありがとう」
オースタの言葉に甘えて二人は椅子に座って休む。
「イリス……遅いね。少し様子見に行かない?」
ルーミが心配する。イリスが出かけてもう3時間は立つ。用事を済ませたらすぐ戻ると言っているがこんなに時間かかるものなのか。
「少し用事が長引いてるのかもね。まあ、休憩もらったことだし少し見に行こっか」
オースタさんに少し出かけると伝え外に出る。最初に向かったのはチュラが教えてくれたお店。
ライのスキルで移動しおばさんに話しかける。
「あの、すみません。さっきここに男の子来ませんでした?」
「あら、前に来てくれた子ね。ええ、何時間か前に来たわよ」
「そ、その時なんか聞かれましたか?」
「三ヶ月前にチュラさんと女性の方がここに来たのは何日だって聞かれたわ。私も歳だし細かく覚えてない、って言ったの」
「やっぱりね……」
「あ、だけど、その時チュラさんがパンをくれたわ。期間限定のショコラパン。それを伝えたらどこかへ行ってしまったわ」
「期間限定の……ショコラパン……」
ライが頭を抱えている。そして何か分かったようで
「ありがとうございます」
とお礼を行って走り出した。ルーミも慌ててついて行く。
「何か分かったの?」
「もしかしたらイリス、パン屋にいるかも。期間限定のパンだとしたら、日にちが絞れるかもしれないから」
「あ、確かに!」
大通りを抜けたらすぐライのスキルでパン屋へと向かう。パン屋の中は混雑していた。
人気のパン屋だからなのか、朝から人がならんでいる。
「……並ばないと中に入れないわね」
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