〜初心者ギルド開設!〜4話

「あなた名前はなんて言うの?」


「私はユリだよ」


「ユリちゃん一人でここに何しにきてたの?」


「お母さんがね、病気で倒れちゃってね。お母さん治すには薬草が必要だから取りにきたの!そこでオオカミに襲われちゃったんだ。薬草も見つからなかった…」


ユリは泣きながら言った。ルーミはしゃがんでユリの頭を撫でた。


「えらいね。お母さんのためにこんな遠くまで一人で来るなんて。大丈夫。お母さんは私が治してあげる」


「ほんと!」


ユリの顔がパッーっと明るくなった。


「それじゃあ村にいこっか」


「うん!」


二人の会話をイリスはジッと見ていた。


『お兄ちゃんだーいすき!』


『……何で…助けてくれなかったの?』


「イリス?」


ハッ


「大丈夫?顔が疲れてるよ?」


「大丈夫だ」


「それならいいけど」


「あれだよー」


ユリが指差した先に集落が見えてきた。多くの人たちがいるのが見える。


「ユリーー!」


「お父さんだ!」


ユリはルーミの手を離して駆けて行った。草原に吹く風がユリの髪の毛を揺らしている。


「ユリ!?良かった…無事で…」


お父さんはユリを抱きしめた。ルーミ達もユリの後を歩いた。


「私がオオカミに襲われているところを助けてくれたの!」


「娘を助けてくださり本当にありがとうございます!」


「いえいえ」


「お腹空いてませんか?良かったらご飯食べていってください」


「いいんですか!」


「ぜひ」


「それじゃあお言葉に甘えて。ライとイリスもいい?」


「ええ」


「俺は別に何にもしてないし」


さっきまでの元気さは消え声は小さかった。


「こちらへどうぞ」


家へ案内された。ルーミはユリにお母さんがいる部屋に案内してもらった。


「失礼します…」


小さく頭を下げ部屋に入る。ベッドには女の人が横たわっていた。


「お母さん。お医者さんがきてくれたよ」


「手触りますね」


ゆっくりと手を持ち上げ目を閉じる。さっきスキルが発動した時、助けたいと思う気持ちがあったから傷を治せた。今回も同じように…


ルーミが持った手から光が現れ全身へと光が伝わっていった。


「お、お母さん…?」


目を瞑っていたお母さんはゆっくりと目を開いた。


「お母さん?!」


「ユリ…」


「お母さん治ったよ!病気治った!お姉さんありがとう!」


ユリは嬉しそうにお母さんに抱きついてルーミにお礼を言った。


「おい!どうした!」


ユリの声を聞きお父さんが駆けつけてきた。そして、ユリとお母さんを見て驚きのあまり固まっている。


「体…もう大丈夫なのか?」


「ええ、とても元気よ」


「君が治してくれたのか?」


「あ、まあ、はい」


「本当にありがとう…!お礼を言っても足りないくらいだ」


涙を流しながらルーミにずっとお礼を言い続けた。


「それじゃあ私は退散しますね」


部屋から出るとバタっとドアにもたれかかりながら座り込んだ。結構な体力を使った。相当重い病気にかかっていたのだろう。


これほど力を使うなんて。けれどみんなが嬉しそうにしていたし、自分も嬉しくなる。やった甲斐があった。


「ルーミ?!どうしたの?大丈夫?」


ライが座り込んでいるルーミを見つけ駆け寄った。


「大丈夫ちょっと力使いすぎちゃった」


「無理しちゃダメよ。だかど、無事治せたのね」


「うん」

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