第2話 ふたりの旅立ち
センタの家。その一室。
二人が椅子に座っていた。ここは居間。くつろぐセンタとは対照的に、トランは落ち着かない様子。
「おじいさんが言ってた。『客人はもてなすものだ』って」
「ありがとう、ございます。センタさん」
「気にするな」
少女は、あまり
お茶を飲み終えて、トランが口を開く。
「センタさん。お願いがあります。わたしに力を貸してください」
トランは真剣なまなざし。少女の長いまつげが動いた。
「タキオン・パワーなんて、ボクは使えないけど」
「タキオン・パワーではなく、センタさんの力です」
少年のように見えるものは、自分の手を見ていた。
「力?」
「この世界を、崩壊から救いたいのです」
センタの回想。かたわらには、おじいさんの姿。
いまと変わらない姿のセンタと、おじいさんが、台所で話している。
冷蔵庫の横に、曜日ごとの当番表が張ってあった。それにはふたりの名前。ひとりはセンタ。もうひとつの名前は、サクセット。
「いいかい。センタや。困ったときはお互いさま。力を貸してあげるべし」
「どうして?」
「そうか。そうさな。お前の知りたいことを、その人が教えてくれるかもしれんからな」
おじいさんは、穏やかな顔をしている。センタは、無表情だった。
「なるほどね」
そのほかにも、いろいろなことをセンタは学んだ。
そして、おじいさんであるサクセットは、帰らぬ人になった。
センタの家。その居間。
「行こう」
「よいのですか?」
「おじいさんが言っていた。『困ったときはお互いさま。力を貸してあげるべし』って」
サクセットおじいさんの言葉。どうやら、少年のように見える存在にとっては、とても強い意味を持つものらしい。
「ありがとう、ございます。センタさん」
少女は、心からの感謝の言葉を伝えた。だが、それがうまく伝わっていないと感じていた。少年の表情がほとんど変わっていないからだ。トランが、
珍しく、センタから口を開く。
「ボクには、故郷がどこかわからないんだ。記憶がないから」
「ここ、草の島ではないのですか?
「わからない。おじいさんが違うって言ってたから、違うんだと思う」
「そうですか。故郷、見つかるといいですね」
トランは、心の底から願っていた。センタの故郷が見つかることを。望みが叶うことを。
家から出るふたり。
空高く、一番上の雲を指差すトラン。ひらひらとした服が、風でなびいた。その表情は生き生きとしている。センタとは対照的に。
こうして、センタは、トランとともに旅に出ることになった。
島々の一番上を目指して。
しかし、そこはまだ誰も到達していない
誰も到達していないその場所に、行くことはできるのだろうか。センタの瞳には、迷いはなかった。
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