第3話 142日目 白瑛公国

 

 「おい、この橋を渡りきれば白瑛公国の国都だ。」

 岩毛は赤い欄干のある橋を先に進んでいる。わたしは岩毛について森からここまで歩いてきた。足はもうくたくた。筋肉痛がひどい。森から国都まで丸2日かかった。日が登っている間は歩きどおしだった。布靴はもちろん土まみれだ。服もずいぶんと汚れた。夜は岩毛の知り合いの農家に泊まった。岩毛は農家に入ると、おばあさんにいくらかの銅貨を握らせてた。おばあさんは、野菜たっぷりのスープを飲ませてくれた。少ししょっぱかったけどおいしかったなあ。体があったまったよ。おばあさんはたき火の近くに藁の上に布を被せて寝床を用意してくれた。

 岩毛は国都に着くまでわたしに手をだして来なかったし、良かった。岩毛が言うとおりわたしみたいな子供には興味がないのだろう。岩毛はいい人なんだ。岩毛は国都で用事あるって言ってたし、わたしに後宮入りできる人を紹介してくれたら、きちんとお礼を言ってお別れしよう。

 わたしと岩毛は、夕方に関所を通って国都に入った。関所には兵士がいたが検問はしていなかった。兵士たちは出入りする人の顔を一人一人つぶさにみていた。怪しい人がいれば検問するのかも知れない。岩毛は関所を通る時、気軽に兵士に挨拶して握手をしていた。岩毛は国都に知り合いが多い

みたいだ。遠くてわからなかったけど、岩毛は兵士に何かを渡しているみたいだった。わたしはまだ子供だから怪しまれなかったのだろう。

 国都はずいぶんと人も多くて賑やかだ。野菜屋には、見たことのないカラフルな果物、野菜が並び、肉屋にはいろいろな肉が並び、何匹もの鳥がまるごと吊るされている。物も豊かで、町を行き交う人々も笑いあっているし、白瑛は平和な国みたいだなあ。皇帝の妃にならないでいいならこの国に住んでみたいなあ。毎日が楽しそうだし。

 岩毛は、大きな店の入り口の前でたちどまった。店の入り口には温泉マークの旗が掲げられている。

 岩毛は振り返ると、

 「砂砂、疲れたろ。風呂屋でキレイにしてもらいな」

と言うや、中に入った。わたしは正直、汗でベタベタだったし、ありがたかった。わたしも岩毛に続いて店に入る。岩毛は女将さんと話しをしていた。





 

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1000日までの後宮妃 フジセ リツ @sfz

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