6.美女とダサ男

里香は目を擦ってもう一度写真を見た。


写っている男子はお世辞にも格好良いとは言えない。

太っていて背も低そうだ。

そして格好も・・・何ともセンスが無い。いや、はっきり言ってダサい。

服装だけでなくメガネもダサい。持っているカバンもダサい。

とにかく全部がまったくイケていない。


改めて都を見た。

お人形さんのように可愛らしい女の子が、嬉しそうに写真を見せている。


「・・・」


言葉を失ってしまった里香を見て、恭介は首を竦めた。


「な? 冴えないだろ、どう見たって。背だって低いし」


「都より1cm高いもん!」


都はキッと顔を上げると、恭介に言い返した。


「太ってるし」


「都より痩せてる男なんて嫌よ!」


「根暗だし」


「根明でチャラい男なんて、都、嫌い!」


「でも、頭いいよな、あいつ」


「!! そうなの! 頭いいの! 超いいの!」


「優しいしな」


「うん! そうなの! 優しいの! 都に凄く優しいの!」


「じゃあ、振られるわけないじゃん」


「・・・」


恭介の言葉に都はまた顔を歪めた。


「あいつ、都に優しいじゃん。それは俺も知っているし。勘違いだろ?」


「・・・でも、許嫁辞めたいって言ったの・・・」


都はまた俯いてしまった。


「それ、本当に言われたの? あり得なくない?」


里香が怒り気味に声を荒げた。


「だって、こんな可愛い子を、こんなダサい男が振るなんて! しかも、こんなに好かれているのに!」


「俺に怒るなよ・・・」


「ちょっと、この男呼び出しなさいよ! 私が文句言ってやる!」


里香は興奮気味にテーブルをバンバン叩いた。

都は頼もしそうに里香を見た。逆に、陽一は呆れたように里香を見た。


「止めとけって。絶対、都の勘違いだよ。だって、和人にとって都と別れるメリット何て一個も無いじゃん。このまま結婚すれば、伯父さんの跡を継ぐだろ? そしたら将来、会社社長じゃん。順風満帆じゃん」


里香は目を丸めた。

可愛い上に社長令嬢! 将来のポストの確約!

そんな好物件のJKを振るなんて、ますます納得がいかない。

もしも、恭介の言う通り、都の勘違いだとしても、勘違いをさせた時点で許せない。


「・・・じゃあ、なんで許嫁辞めたいって言ったの・・・?」


都は縋るように恭一を見つめた。


「うーん、聞き間違い?」


「違うもん! 屋上で言われたの!」


「じゃあ、本当か」


「わ~ん!!」


都は里香に抱きついて泣き出した。

里香はそんな都の頭を優しく撫でると、


「とにかく、理由を聞かなきゃ納得できないわよね。聞いていないんでしょ?」


そう言って、都の顔を覗き込んだ。

都はコクンと頷いた。


「男らしくないわよ!そんなの!」


「うーん、だって、男らしいってタイプじゃないもんな、和人って」


プンプン怒る里香に、恭介はスマホをいじりながら答えた。

そんな恭介を都は涙を拭きながら睨みつけた。


「・・・男らしいもん。都より大きくて・・・、ぶつかっても倒れないもん・・・」


「だから、それはデブだからだろ」


「違うのっ! おデブじゃなくて大きいのっ!」


自分を振った相手だというのに、恭介の暴言に抗議する都の健気さに、里香はますます彼女に感情移入してしまった。


「なんていい子なの! 都ちゃん!」


里香は都をぎゅうぅっと抱きしめた。


「うぐっ・・・」


都はロープロープ!と言わんばかりに、テーブルとトントン叩いたが、里香はそれに気が付かない。

恭介に引き離されて、都はやっと息が付けた。

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