第2話
「アタシもキミの仲間なんだよ。一緒にお出掛けしない?」
次の日の朝、一本遅らせた電車の中で隣り合わせた女から声を掛けられた。彼女は纏う制服からして通学先を共有するので不審人物ではないようだ。「仲間とは?」訊き返すと、「アタシもヒトを好きになれないんだ」という返事がされ、わたしが恋愛経験を持たず、独り身を苦にしないことは悪い噂としてある程度広がっているようなので、それを頼りに絡んで来たらしい。
「恋愛って気持ち悪いよね!」そのフレーズに惹かれて、わたしは彼女と親交を深めてみることにした。
毒薬との時間を積み上げる夕暮れ時、「行こう?」と導かれ途中の駅で降りることになった。歓楽街広がるこの駅は二人で何度か訪れており、今日も何処かに寄るのだろうかと後ろを付く。
「ホテルに行かない?」提示された行き先は予想外のものだった。
「お泊り会?明日も学校あるけど」
「偶には一緒に夜を明かそうよ。この方が近いでしょ?」話を進めるにホテルは予約済みらしく、断る訳にはいかないと路地裏へ歩いて行った。それらしい建物の前に着いて中に入り、橙に灯される部屋に座り毒薬の入浴を待ち、続いてシャワーを浴びるまでは良かった。
「じゃあおいで!」濡れた髪に飛ばしてきた台詞は、誰がどう考えても性の絡みを促すものであった。わたしは急いで鞄を拾い取り、支払いを放棄して一人駅へ舞い戻った。おいおい、今までの発言は何だったんだ。信じたわたしが馬鹿だったのか?
その後、学校ですれ違う度に「この前はごめんね、また遊ぼう?」と誘われるが、その裏に不純な想いが隠れているのは明らかだった。わたしと同様噂の多いらしい彼女を調べれば、これまで相当数の交際と決別を繰り返してきたようだ。
彼女は恋愛感情を生産しない代わりに、性的欲望を人並み以上に抱える人間。性愛の二字の内、愛の概念が欠けているだけだった。しかしそれはそれで、性に託けさえすれば利用出来る都合の良い女だと安心した。そんな日が来るはずはないけど。
バイバイ、アロマンティック。列車を変えることにした。
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