第5章「彼女(未遂+許婚あり)+自分+転校生(自称犠牲者) ∉・・・」
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第5章「彼女(未遂+許婚あり)+自分+転校生(自称犠牲者) ∉・・・」
翌日朝、目を覚ましリビングに向かうと見計らったようにチャイムが鳴ったため玄関に向かうとそこには自称犠牲者の可奈芽が居た。
「何やってんの?」
「あんたを迎えに来たに決まってるでしょ!というかなんでまだ寝間着なのよ!」
彼女は怒りながらそう言った。
「なんで居るんだよ。」
「だから彼女としてあんたを迎えに来たの!」
「正直お前を彼女にした覚えはないのだが?」
「いいからさっさと着替えなさいよ!」
「さっき起きたばっかなんだけど・・・」
「あっそ!もう知らない!」
そういい彼女は扉を強く締め帰っていった。
「何だったんだ一体・・・」
そんな事を呟きリビングに戻る。
今日も今日とて親はいないから適当にご飯を作る。
とは言っても作るのはめんどくさいから適当にあるものを焼くだけだ。
そうして適当な料理を作っているとまたチャイムが鳴った。
「おはよう。律都君。」
「おはよう、嵯峨野さん。ところでこんな早くにどうしました?」
「とりあえず中は言ってもいい?」
「あ、それもそうですね。どうぞ」
そうして自分は彼女(未遂)を招き入れた。
「ところでさ、律都くん。」
「何でしょう?」
「この焦げたにおい何?」
「あっ、」
そう、自分はさっきまで料理をしていたのだ。
すっかり忘れていて見事焦がしてしまった。
「匂いのもとはこれだね。うん、見事に真っ黒」
そういい彼女は笑った。
それからの彼女の手際は素晴らしかった。
焦げてダークマターと化したこの物体を焦げているところを取り除き、それどころか冷蔵庫にあるものを使い立派な料理に仕上げたのだ。
「すごい…、あんな物をいともたやすく…。しかもすごいおいしい!」
「当然だよ。だって恋する女の子だもん!」
そういい彼女はまた笑った。
その笑顔は大変明るくなぜか暗くも見えた。
「ところでさ、迷惑かけてごめんね?私が来る前に可奈芽が来たでしょ?出会って数日なのにすごいよね。こんなに仲良くなっちゃって。」
「来てたけど大丈夫だよ。起こしに来てくれたみたい。起きたのを確認したらすぐに行っちゃったよ。」
「そっか、これからも可奈芽をよろしくね。」
それじゃ、彼女はそういい家を出た。
そういえば彼女は可奈芽とのあの会話は知らないようだ。
けど薄々気付いているのだろう。
今自分がやっている事が。
ある意味一種の不貞行為だ。
しかし自分はこの関係が長く続いてほしいと思ってる。
それどころか知らない許婚より自分を選んでほしいとすら思える。
けどそんな訳にもいかない。
家柄だって彼女と自分では釣り合わない。
それなら可奈芽のいう通り可奈芽と付き合い間接的にそばに居て彼女を支えたほうがいいとすら思える。
どんなに考えても自分が納得できる終着点が思いつかない。
逆に自分が納得できても彼女が不幸せになる終着点しか思いつかない。
本当にどうするべきだろうか。
しいて言うなら一つだけどちらも幸せにはならないけど不幸せにもならない道が一つだけある。
しかしこれは一つでも条件が狂うと確実にどちらもが不幸せになる選択だ。
これを選んでいいものか…。
そう考えを巡らせていると突然電話が鳴った。
表示を見ると相手は可奈芽だった。
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