第7話 惹かれる

樹さんと2人で会った日から、それまでよりも増して樹さんのことが頭に浮かぶようになった。


陽人にはないファッションセンスの良さ、そしてその服装がよく似合っていること。

それに加えて、私のコミュニケーション能力の低さに嫌な顔ひとつせずに、話に付き合ってくれた優しさも持ち合わせている。

(陽人ももちろん、私のその欠点を咎めることなく付き合ってくれている。)


日々このことを考えているうちに、私の中で、ある気持ちが芽生えていることに気がつく。



「(樹さんのことが好き…?)」



そんなわけない、と何度も考えたが考えれば考えるほどに、樹さんに対しての気持ちを痛感するだけだった。


「(だけど私は今、陽人のことが好きで陽人とと付き合っている。 …なのになんで、樹さんのことが好きだなんて思ってしまうの…?)」


何故こんなにも樹さんに惹かれているのか自分でも分からなかった。





樹さんに対しての思いを秘めながら、陽人とは今までどおり交際を続けた。


樹さんとの他愛のないSNSのDMも、2人で会う以前と同じように何度か交わした。


私は以前にもまして、樹さんからの返信が待ち遠しく、返信が来ると嬉しくなっていた。


樹さんからの返信が3日間来なかった時は、迷惑なことを聞いてしまっただろうかと不安になることもあった。


そして次第に、陽人の知らないところで、樹さんとやり取りをしていることにさえ楽しさや嬉しさを感じるようになっていた。



私は酷い女だ。

1人の人に好意を持ってもらって、順調に交際しているというのに、他の人のことも好きになるなんて。




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