2. 放課後勉強

そして早く迎えた放課後。

お母さんにはメッセージで『ちょっと今日友達と寄り道するから、帰るのは夕方五時くらいになると思う』と送っておいた。

え?何故かって?

それは…。

「沙希、どうする?コンビニでなんか買う?」

「うん、そうだね」

駿夜との受験勉強会。

ホントは約束しなくてもいつも行くからいいんだけど、今日は始業式で早帰り。

せっかくだから、二人でなんか食べてからにしよう、という話になった。

「じゃあ、わ、私はおにぎりでいいよ」

「え?腹減ってねーの?」

「駿夜がおなか減りすぎなの」

ホント、男子ってなんでそんなにお腹が空くの?って疑問に思うくらいだよ。

私は渋い梅干しおにぎりでも買うか、それとももっとシンプルすぎる塩おにぎりにするのか迷った。

「決めた?」

「うん。梅干し」

「分かった」

そう言うと私の手の中にあった梅干しおにぎりを駿夜が取る。

「奢る」

「え、いいよ、申し訳ない」

「いや、この後飲み物奢ってもらうから」

「いつの間に決まってたの……」

「ああ」

「まず、お昼ご飯を駿夜が奢ってくれて、飲み物を私が奢るんだったらそれぞれ買った方が早くない?」

「いーだろ、別に」

「…分かったー…」

そんな会話をして、駿夜はレジへ向かった。



そして、駿夜の申し出で自販機で飲み物を奢り、今は図書館。

数学を教えてくれてたけど、色々教えてくれたおかげで、『これ教えて?』っていうことも無くなってきた時。

チラッと横を見ると、肘をついている駿夜が。

駿夜は、難しい問題を考えるとき、シャーペンをカチカチやるんだけど、今はやってない。かつ、何も文字を書いていない。

どうしたんだろう。

すると、駿夜の首が少し垂れた。

「あ…」

それのおかげで分かったけど、駿夜は舟をこぎ始めていた。

コクリコクリとしていたところだったらしい。

やがて、こっちを向いて眠ってしまった。

…ちょっと寒いかな。

私は薄い上着を駿夜の背中にかける。

駿夜の幼気な寝顔を見つめているうちに、私は薄々自分の気持ちに気付いた…。

「…やっぱり、好きになっちゃうもんなんだなぁ」

小さく呟いたその声は、騒めく図書館にかき消された――――。

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