第38話 気まぐれ


 「ほい、焼けましたよ。熱いから気を付けて下さいね? エレーヌさん、あーん」


 「あーん」


 一応注意を促しながら、巨大焼きソーセージを彼女に向けてみれば。

 魔女様は戸惑うことなくパクリと一口。

 その際パリッ! と非常に良い音が響き渡り、齧った先からは肉汁が溢れて来る程。

 いやぁ、凄いなコレ。

 デカいだけで質が悪いって食べ物はよく見るけど、コイツは質まで良いらしい。

 満足そうに微笑んでいる魔女様の表情を見れば、味も良いと思って間違いないのだろう。

 “あの村”で色々とお話した結果頂いた、言い方を変えれば“献上”品な訳だが。

 これは良い物を貰ってしまった。


 「貴方……本当に良い性格してるわね。普通選手の控え室で料理始める? あり得ないでしょ、こんなにモクモク煙上げて」


 試合が終わった後、俺達は皆の控え室に乗り込み今に至る。

 そんな訳でウツギさんも一緒に付いて来た訳だが。

 非常に呆れた視線を此方に送りながら、壁に寄りかかっている。

 なんかいちいち行動が格好良いなこの人。

 とか思いながら食べ掛けのソーセージを差し出してみれば、すぐさま近寄って来てパクリ。

 やはり、食事は偉大だ。


 「うんまい。というか、犯罪行為はしないって言ってたわよね? アレはセーフな訳?」


 「奴隷売買のルールは各国によって様々ですからね。もちろんセーフです」


 「え? でも、村の人に貴方……」


 「別に“この国や周辺の領地で犯罪行為だ”とは一度も言ってませんよ? 俺が前に住んで居た国ならアウトだったってだけです」


 「本当に性格悪いのね……」


 口元に付いた肉脂をグローブで拭った彼女に、再び呆れ顔を向けられてしまった。

 いいじゃないか、上手くいったんだから。

 などと不満な気持ちを浮かべていれば。


 「なぁトレック、結局どうなったんだ?」


 試合が終わってからずっと不安そうにしていたジンさんが、こちらを覗き込んでくる。

 戻ってすぐにラムさんの治療を受け始め、その間にこっちは料理していたのだ。

 肝心な所を聞けぬままになっていた訳だ。

 これは酷い事をしてしまったと反省してから、今度は彼の方にソーセージを差し出した。

 彼がバクリと食いつけば、手に持っていた巨大肉は姿を消してしまったが。


 「問題ありません、全員確保しました。皆怪我一つありませんよ」


 そう言い放ってみれば、ぶはぁぁ……と息を吐きながら彼は椅子の背もたれに体重を預ける。


 「ほんと、なんて礼を言ったら良いかわかんねぇよ。依頼したのがお前で良かった。ありがとな、トレック」


 「いえいえ、でも色々と別の問題が出て来まして」


 「どうした? それは俺に解決できる事か?」


 再び身を乗り出して来たジンさんに対して、ニッと微笑みを浮かべてみせる。


 「ちょっと予想以上の出費が多くてですねぇ。いやぁ、困ったなぁ」


 意地悪く含んだ言い方をしてみれば、彼は慌てた様子で床に膝をついた。


 「他の奴等を助けてくれるなら、俺は五区に残っても良い! だから頼む! 俺の取り分も全部お前にやる! だからっ!」


 勢いよく頭を下げようとするジンさんの額を、ガシッとエレーヌさんが掴み取った。


 「相変わらず、すぐに頭を下げるのね。図体の割に臆病だわ、ジン。話は最後まで聞きなさい。トレックのあの顔を良く見なさい、とても意地悪な顔をしているわ」


 「エレーヌさん……言い方」


 「こういう顔を仲間に向ける時は、大体良い知らせよ。トレックは意地悪だから、美味しい物を用意した時は絶対に勿体つけるの」


 「今回はすぐ出したじゃないですかぁ!」


 思わず叫び声を上げてみれば、魔女様はクスクスと笑いながらジンさんの額から手を放した。

 まぁ、良いか。

 次の試合まで時間もないだろうし、さっさと済ませてしまおう。


 「結果から言いますね? 今回の件で俺は余計な出費が増えました、ソレを報酬に上乗せして欲しいんです。ですが、払えない額を要求するつもりはありません。なんたって、計算上ギリギリだった賞金が、だいぶ余る事になりますからね」


 「……は?」


 今まで見た事も無い間抜け面を晒しているジンさんを横目に、もう一本ソーセージを焼き始めながら説明を続けた。


 「いいですか? 今回の事に関しては非常に異例というか、特殊な条件が重なって、逆に俺達に有利に働いた形になります。普段はこんなサービスしませんからね?」


 ニヤッと口元を吊り上げながら、事の顛末を話していく。

 まず、奴隷に堕とされ無理やり近隣に送られた五区の仲間達。

 物凄く簡単に言ってしまえば、全部俺が“買った”。

 とんでもなく安かったし。

 買い手も犯罪者ですよ? と匂わせてみれば村の方は奴隷購入を拒否し、売りに来た者達は途方に暮れた訳だ。

 しかし彼らは主人に、“確かに処分した”という証明が欲しい訳で。

 簡単に言えば領収書だ。

 という事で他の村に売りに行く手間と、時間と人を動かす費用諸々をお話してから。


 「ではこうしましょうか、私が彼等を購入させて頂きます。そうすれば貴方方は雇い主に問題なく報告出来る上、村の方も奴隷を買わなくて済む」


 「いや、しかし……いいのか?」


 「私は旅人です。少しくらい目に余る事をしたところで、明日の朝にはこの周辺から姿をくらます事だって出来ますから」


 彼等にとっては金額云々より“売る”事が大事だったようで、一声かければ金額が下がり、二声上げれば半額以下。

 いや、良い買い物しましたわ。

 なんて満足していた訳だが、これには村の方からも声が上がった。


 「これで俺等は同じ穴の狢ってわけだろ? だったら、お互い口を閉じてれば何も問題ねぇって事だよな? 兄弟」


 「誰が兄弟ですか誰が。さっきの話聞いていました? 私は旅人ですが、貴方はココに住んでいるのでしょう? そもそも条件が違うというのがまだわかりませんか?」


 「……つまり、俺等の方だけ通報しようってか? おいおい、そりゃねぇぜ旅人さんよ」


 「そうならない為に、私の方からも少々お願いがあるのですが」


 今までの事を罪に問われる事を恐れたのか、色々とお願いしてみれば村人の方も快くお話を聞いてくれた上、お土産まで頂いてしまったのだ。

 本日仕入れた物品の数々だったが。

 彼らから献上するかの如く差し出された物品をありがたく頂戴してから、彼等の取引を“国には”絶対口外しないと言う契約書まで交わし、こちらは無事仕事を終えたという訳である。

 こちらの国ではこういう奴隷売買は頻繁に起こっている上、ルール上犯罪にはなり得ない。

 むしろ借金をした人に対して、国が無理矢理奴隷に堕とす様な真似だってしているのだ。

 全ての人を管理している訳ではないだろうが、叩けば色んな所から埃が出そうな国な訳で。

 他所の国に入る時、独特なルールなどがないかは一通り調べる様にしているが……まさか個人の奴隷売買に関しての法が、かなり分かり難く書き示されているとは思わなかった。

 そのせいで、というかそのお陰で? 売り手も村人も俺の口八丁に踊らされたという結果に。

 ○○な状況で○○だった場合は××であり~なんて、長ったらしい条件付きの法を読み上げてみれば、相手も混乱したのか。

 ホイホイ条件を呑んだ上、俺が何か言う前に値引きしたり、物品をくれたり、更には意味も無い契約書を書いた形になった訳だ。

 貴族や商人相手だったらここまで事が上手く運ばなかっただろうが、今回の相手は雇われと村人。

 直接的な言い回しを避けて、罪に問われる“場合がある”、これは“殆ど”の場合こうなる。

 なんて詐欺師まがいな発言を繰り返し、小難しい話や昔の国の法の話なんかを持ち出せば、首を傾げながら半分以上話を聞き流している様な状態になってしまった。


 「ま、という訳で。仲間達の購入費用と、情報収集に使った経費を頂ければなと思いまして。安心して下さい? 三区の身分証全員分よりかは、遥かに安いです。なので、予定していた賞金だけでもお釣りが来ます」


 長々と説明してみれば、ポカンと口を開けるジンさんとウィーズ。

 何か言いなさいよ、これでも結構頭使って頑張ったんだぞ?

 とか思いながらムスッと唇を尖らせてみれば。


 「相手の薄汚い依頼を逆に利用したって形ね、犯罪に手を貸した訳じゃないと分かって安心したわ。全く、他国の法律をそれだけ読み込む奴なんて早々居ないけど……やっぱり怖いわ、貴方」


 ウツギさんが、盛大なため息を漏らしてジト目を此方に向けて来た。

 この子は少し俺を疑い過ぎだと思うんだ。

 最初から“多分”平気だって言ったじゃないか。


 「あと、もう一本頂戴。魔女の後で良いから」


 別にいくらでも食べてくれて構わないが、不思議な言い回しをしてくるのでエレーヌさんに視線を向けてみると。

 今までの説明を聞いていたのか疑わしくなる程に、ジッと焼いているソーセージを眺めていた。

 はい、もう焼けますから。

 話も一段落したので、もっといっぺんに焼きますから。

 そんな訳で、何本ものソーセージを網の上に並べてみれば。


 「ちょ、ちょっと待って! つまりどういう事!?」


 立ち上がったウィーズが、目を見開きながら叫び声を上げるが……さっき説明したじゃないか。


 「つまり、身分証が必要なのはお前とジンさんだけだって事だよ。残る数十人は、既に俺の所有物。こっちに払う追加報酬を考えても、最初考えていたより手元に残る金額がデカいって事」


 これでもしも購入したのが借金奴隷であった場合、返済の責任は俺に降りかかって来る事になるが。

 五区に居た仲間達は皆最初から金が無かっただけで、借金などは拵えていなかった。

 ジンさんやウィーズが沢山稼いでいたお陰と言えるだろう。

 というかこの方法を使えば、借金奴隷以外なら結構簡単に“外には”出られてしまう訳だが……本当に信用できる相手じゃないと奴隷にされてそのままって事もあるだろうし、外に出たところで先立つものが無い。

 まぁ、厳しいだろうな。


 「良い事尽くしじゃない!」


 「だからそう言ってんだろ。まぁなんだ、悪巧みしてきたヤツを逆に利用させてもらったんだよ。下っ端まで頭が回るようだったら、こうはいかなかっただろうけどな。あとこの方法だと身分証が無いまま外に出るから、他の皆はこの国には帰ってこられないからな? もしも戻って“暮す”となると、他で稼いでからじゃないと無理だ」


 言い放ってみれば、彼女は茫然としながら再び椅子に腰を落とした。


 「あ、あはは……ホント、頼ったのがアンタで良かったわ」


 「大いに感謝しろ、ちびっ子。そんでもって、よく頑張ったな。今回の御褒美だ」


 そう言ってソーセージを丸々一本差し出してみれば、彼女は未だ信じられないという顔のまま、カプッと小さい口を開いてお肉様に噛みついてみせた。

 前まで豪快に食っていたのが嘘みたいに、本当に小さな口を開けて。


 「うん……ありがと。美味しい、おいしぃよ……ありがと、トレック……」


 「泣くか食うかどっちかにしろっての」


 「うっさいわよ、ばかぁ……」


 グズグズと涙を溢しながら、ウィーズはソーセージを齧り始めた。

 やはり、不安だったのだろう。

 全員での脱出、ギリギリの金額。

 そして何より、“勝ち抜く”のが絶対条件だという事が。

 ま、最後の問題は未だ残っている訳だが。

 正直に言ってしまえば、今回と同じ手段を使って二人を外に出す事も出来る。

 が、しかし。

 それではただただ俺が助けるだけになってしまう。

 もっと意地の悪い言い方をするなら、俺にとっての利が無い。

 生憎と商人である為、負債しかないお仕事は受けないのだ。


 「さて、しかしまだ問題は残っています。これらは全て、俺達が“優勝”する事が前提のお話しです。もしも決勝で敗れれば、全てがパーになります。出費塗れな上、二人は五区に残らなければいけなくなる。だというのに、仲間達は外に出っぱなしですからね」


 両手を広げ大袈裟に言い放ってみれば、ウィーズが盛大にむせ込んだ。

 そしてジンさんは険しい顔のまま頷いてから、足元に転がる大剣へと視線を向ける。


 「こんな所まで来て頼りっぱなしで申し訳ねぇが……本当にどうする? ウィーズはもうボロボロだし、俺の剣もこんなだ。今から新しい武装を用意する時間もねぇ、向こうの準決勝が終われば、すぐに俺達に声が掛かるだろうよ」


 「私はまだ戦えるわよ!」


 「うるせぇウィーズ、剣は無事でも鎧は駄目だ。しかも“脚”に限界が来てるんだろう? もうお前は今日走れねぇよ。この先もずっと走れねぇ様にはなりたくねぇだろ? 止めておけ」


 「でもっ!」


 「こんな時くらい言う事を聞け!」


 「ヤダッ!」


 なんだか、親子喧嘩みたいなのが始まってしまった。

 でも何というか、良いなぁこういうの。

 俺の家では、絶対にどちらかが理性的だったというか。

 相手の言う事に対して、納得させられる答えを考えながら話していた気がする。

 こうも感情をぶつけ合う関係というのは、傍から見ているとどうしても“仲が良い”と表現する他なかった。

 と、言う訳で。

 この二人の仲を引き裂かない為にも。


 「エレーヌさん、いけますか?」


 「えぇ、もちろん」


 差し出したソーセージに齧りつきながら、彼女は不敵に笑って見せる。

 モグモグしているのがちょっと格好付かないが、今だけは気にしない様にしよう。


 「五対一です。しかも、“血喰らい”が不調なんでしょう?」


 「その程度、どうってこと無いわ。私はトレックの前なら“最強”を演じるもの」


 そう言って彼女は、黒い長剣を抜き放って見せた。

 魔術が発動しないと言っていたが……コレと言って亀裂などの破損は見られない。

 今回の試合中、魔力と血を吸われた感覚はあったと言う事だから、多分また違う原因なのだろうが。

 魔道具なら得意なのだ、しかし“魔剣”となると……。

 なんて事を思いながら、ジッと美しい黒い刃を眺めていれば。


 「ソレ、魔剣よね? 私のも魔弓だから、何となく分かるけど。前に魔術が発動した時、何か状況の変化はなかったの? こう言うのって、結構気分屋だから」


 ウツギさんが急にそんな事を言い始めた。

 というかエレーヌさんが彼女の弓に興味を持っていたが、まさか御同類?

 魔女ではないと言っていたけど、武器は同じようなモノを使っているのか。

 ハーフエルフって凄い。

 何てことを思いながらも、前回エレーヌさんが魔術を使った時の事を思い出した。

 そりゃもう酷い惨状で、俺もぶっ刺されたし、エレーヌさんも血だらけだったし……。


 「あれ? エレーヌさん、血と魔力を吸われている感覚はあったんですよね? でも魔術が発動しない、まるで“切っ掛け”が足りないみたいに」


 「そうね、その表現が一番正しい様な感じ」


 そう言って、彼女はこちらに“血喰らい”を渡して来た。

 普通の物よりずっと長いから、結構重い。

 俺ではエレーヌさんみたいに振り回す事さえ出来ないだろう。

 とか何とか思いながら、ジッと刃を眺めた。

 鏡の様に美しく、刀身には俺の顔が映っている。

 刃こぼれ一つせずに、彼女の事を支えてくれた相棒。

 だからこそ、魔剣と聞いても恐怖の前に安心感の様なモノが浮かんでくるのだが。

 なんだろう、このソワソワする感じ。

 前に彼女の剣を見た時には、抱かなかった感情だ。

 なので。


 「えい」


 その刃に、指を押し付けた。

 スパッとばかりに、皮一枚どころか肉まで到達し俺の血液が刀身に触れる。


 「トレック!? 何をしているの!?」


 とんでもなく慌てた様子で、エレーヌさんが俺の手から“血喰らい”を掻っ攫っていく訳だが。

 しかし、彼女が手にした魔剣には赤い模様が浮かび上がっていた。

 これってつまり、まさかとは思うが。


 「エレーヌさんの魔力と血も使えるけど、俺の血に反応して魔剣が“起きた”。つまり……俺の血が鍵になっちゃってません?」


 あははっと乾いた笑みを浮かべてみれば、彼女は非常に不機嫌そうな様子で魔剣を睨んだ。


 「……まさかとは思うけど、私よりトレックの“血”を気に入ったの? それでも私を吸い上げるって事は、私の事を魔力庫か何かかと思っているのかしら?」


 とても不機嫌そうな声を上げるが、当然魔剣が答える筈もなく。


 「たまにある事だよ、魔女。こういう武器を使っている以上、諦めて。その子は持ち主を“変えた”。でも当の本人が使える技術がないから、渋々貴女に使われてるって所じゃない? 本当に気分屋だから、他に理由があるのかもしれないけど」


 ウツギさんの声に、“血喰らい”の不調の原因が多分判明してしまった。

 俺があの剣に選ばれたって事は流石に無いと思うので、本当に“気まぐれ”みたいなモノなのだろうが。

 盛大に腹にぶっ刺さったからなぁ……旨かったのか、そうか。

 思わず以前魔剣が刺さった場所を擦りながらも、ニッと口元を吊り上げてみせた。


 「でもこれで、心配事は無くなりました。要は俺の“血”が少しでもあれば魔剣は発動し、エレーヌさんの魔力があれば魔術は使える。もう、怖い物を想像する方が難しいですよ」


 それだけ言ってから俺は手首にナイフの刃を走らせ、小瓶に血液を溜めて行く。

 その際、色んな所から悲鳴が上がり皆して俺を止めようと手を伸ばして来た訳だが。


 「五区、虎パーティの皆様。そろそろ試合開始の時間……えぇと、よろしいですか?」


 「あ、はーい。すぐ行きます」


 俺達を呼びに来てくれた兵士に軽い声を返すが、皆は俺から刃物を取り上げようと必死。

 今の光景を見て分かっただろうが、俺の血が必要なんだ。

 しかもどれ程の間魔術が発動してくれるかも試していない。

 なら、多く保管しておいた方が良いと思ったのだが。


 「ラム! この馬鹿の手首を今すぐ治してやれ!」


 「分かってるよ兄さん! 早く取り押さえて!」


 「アンタ馬鹿なの!? 深く斬り過ぎよ! ダバダバ出血してるじゃない!」


 獣人諸君に悲鳴を上げられ、ウツギさんは非常に呆れ顔。

 そして、魔女様といえば。


 「トレック……本当に怒るよ? 私には怪我するなって言うくせに、なんでそういう事するの?」


 何だか精神年齢が下がった様な口調で、涙目で怒られてしまった。

 これは何というか、非常に気まずい。


 「えっと、大丈夫ですよ? これくらいなら止血すれば死ぬ心配もありませんし、道具も薬も――」


 「トレック!」


 「……すみませんでした」


 とりあえず、反省しながら深く頭を下げるのであった。

 エレーヌさんに泣かれるの、やっぱり慣れない……。

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