マジックマッシュルーム

 

マジックマッシュルーム

「マジックマッシュルームって本当にきのこなんですね。なんか意外」


 私がそう言うと、男はあきれたようにこう言った。


「そうに決まってるじゃん。マッシュルームってきのこのことだしね。そういや、君はどうやってマジックマッシュルームのことを知ったの?」


「私は、ねこぢるの本を読んだのが最初ですね。ねこぢるが海外でマジックマッシュルームを食べたら、冷蔵庫が喋り出したっていうのを見て面白そうだなと思って食べてみたいと思いました。あと、南条あやの日記」


「それって1990年代の話でしょ。君、2003年生まれなのによく知ってたね」


「ブックオフで完全自殺マニュアルを読んでたら、山田花子っていう漫画家が出てきたんですよ。それで山田花子のことをいろいろと調べていたら、関連する人物に出てきたんです」


「へー、そうなんだ。それじゃあ、気を取り直して、今からマジックマッシュルームを食べようか」


「はい」


 それから、私たちはコンビニで買ったカップのみそ汁にマジックマッシュルームを入れて飲んだ。そして、1時間後。変化が現れた。男の家に飾られていた、絵の中の女性が動き出し、喋り出したのである。それはまるでハリーポッターの肖像画のようであった。けれど、その言葉は日本語ではないらしく、なんて言っているかはよくわからなかった。


「マジックマッシュルームって本当にすごいですね。高橋さんっ」


 私は、嬉しそうに男に向かってそう言った。しかし、男はぼぉーとしていて反応は薄かった。


 この状態で手首を切ったら、どんな幻覚が見られるんだろう。そう思い、私は台所の包丁スタンドから包丁を取り出した。そして、手首を切った。すると、傷口からは血ではなく1万円札が溢れ出てきた。触った質感も本物だ。すごい。きっと、これは本物の1万円札だ。この時私は、本気でそう思っていた。


 包丁を持って、男がいた部屋に戻ると、私は座っている男を押し倒して、包丁で首を突き刺した。すると、やはりさっきと同じように1万円札が出てくるではないか。私は、お金がもっと欲しくて、包丁で男の首を何度も何度も突き刺した。私と男の周りは、1万円札で溢れていた。やった、これで将来の心配なんてしなくていい。そう思うと、なんだか眠くなってきた。そして目を覚ますと、大量の1万円札は消え、血溜まりに男が倒れていた。

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マジックマッシュルーム   @hanashiro_himeka

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