第11話 決心
もうあたしが居なくたって……。そう思うと涙が止まらない。ママとお姉ちゃんは何とも思わないだろう、パパにはそもそもあたしが居なくなった話なんて知らないだろう。ママとの連絡を絶っているのだから。
気がついたらあたしは『消える方法』をネットで調べていた。動画サイトでその方法を解説しているものも見た。
「はぁ……」
ため息が止まらない。外からは執拗いくらいお姉ちゃんとママの話し声が聞こえてくる。
ふと外を見るといつの間にか空は藍色で染められていた。お姉ちゃんにそろそろ晩御飯、と言われたけどお腹すいていないからあたしはいらないと言った。
どうしようかな……あたしはこれから何して生きたら良いんだろう?
あたしは財布を持って階段を下りた。
「サキ、どこ行くの?」
お姉ちゃんが玄関からひょっこり顔を出した。あたしは無視して外に出ようとした。でも、お姉ちゃんはあたしの手を掴む。
「離して!」
「どこ行くか教えてよ! もう暗いし」
「あたしの行き先なんて、関係ないでしょ! お姉ちゃんが知ったって!」
あたしはお姉ちゃんの手を振り払おうとした。でも、お姉ちゃんの力は強すぎて何にも抵抗できていない。
「サキ! 何してるの!」
ママに久しぶりに名前を呼ばれた。あたしはすぐに、いつの間にか大人しくなった。
「百合、あっちで夕食食べましょう」
「でも、サキが……」
「いいの、気にしないで。あの子はもう子供じゃないし」
あたしはその隙に家を出た。真っ先に向かったのはホームセンター。あそこで2メートルのロープを買った。
夜はどんどん深くなっていく。そばの公園の大木がふと目に入った。
これなら強い、ここにしよう。あたしは公園のベンチに座って、準備をした。
幸い、人通りが少ない公園だから補導が来ることは無かった。
準備を終わらせると、時計は8を指していた。もうこんな時間か、そんな気持ちを脳裏によぎらせて、あたしは最後の仕上げのためにロープを木に巻いた。
「サキ!」
後ろを振り向くと、会いたくない人が公園の入口に立っていた。
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