Kiss
「え?麻酔弾?一応の備えしかないよ?……ええと、10発!」
腰のポシェットから緊急用の麻酔弾の入った
「良かった……。私のと合わせてちょうど20発よ……。ベネディ、任せるわ」
自らのポシェットから同じ麻酔弾の
私は意に介さずに説明を始めた。
「正面奥に先頭を駆ける1人。前方3人。
ベネディは駆ける速度そのままに慌てて転びそうになる。シルバーのツインテールが揺れて月明かりに光った。
「ちょっ……!ちょっと待って?……ねぇ、カシ?……わ、私が1人でやるの?」
「あ、でも
3発の弾を抜いてから
「そ……そんなの無理よ!私……出来っこない!」
「
ベネディは涙目になり、口をわなわなと震わせながら言葉に詰まってしまった。
私は目を細めて少し首を
「怖い?」
「す……少し。でも……、それよりも……。どうしてカシは一緒にしてくれないの?」
「時間が無いの……。私はシロンの所へ行く……」
その言葉を聞いてベネディのツインテールは
「そ……!そんなのだめぇぇっ!」
「ベネディ……」
「絶っ対に駄目!そんなこと絶対に許さない!カシはいつも1人で背負いすぎだよ!いっつも知らないうちに1人で行っちゃう!駄目駄目駄目駄目!絶っ対にだめぇっ!もうカシだけ危険な所へは行かせない!絶対離れないんだからぁ!」
それはベネディが久しく見せる本気で怒った時のものだった。
私はなんとか彼女を
「お役目……いつもの任務だから大丈夫よ?それにシロンはね……、いつも私が目的みたいだし、よく相手をするの。慣れた敵だから問題ないわ」
「カシが目的……?」
ベネディのツインテールはさらに逆立った。
「
(しまった……逆効果。火に油だった)と、私は失言を悔やんだ。
もう収まらないかと懸念した次の瞬間、ベネディは急に元気を無くして
それはまるでシュンと
「や……約束を破って勝手に来たのは謝る……。でも……、でも本当に心配だったの……。もう離れたくない。カシは、私のこといらないんだ……。
任務が最優先だけれど、ここまで来てくれたベネディの気持ちを踏みにじるつもりなんてもちろん無かった。
「ベネディ……」
私はピオッジアを片手に持ち変えて、並走するベネディの肩を駆けながら掴むと、その右目にそっとキスをした。
「ふぁぁ……」
ベネディの顔は突然のことに驚きながらみるみる
彼女が転ばないように少し肩を抱いた。
「ごめんなさい。私も
ベネディは
「カシは私が好き、私しかいない。カシは私が好き、私しかいない」
と何度も繰り返し
「またすぐに合流する。必ず無事に戻るわ。帰ったら2人でお茶会しましょうね」
ベネディはポカンと口を開けながらコクリと
「うん……。ディナーしてバスタイムで洗いっこしてベッドで一緒にチュッチュッして寝るぅ……」
「そ……、そこまでは言ってないわ……」
ベネディはこの速度で駆けながら器用に瞳を閉じた。
「もっかぁい……。ちゅぅぅ」
「後でね……。いい子だから……」
「
ベネディはツインテールをぴょこぴょこと揺らし、右眼をまるで
───さて、と……。
私は右のつま先で地面を噛んで
シロンが迫り来るであろう向こうの闇を見つめて深呼吸をした。
───今日こそ……。待っていなさい、ド変態。
一度
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