再起
アルク・トゥールビオネ。
リヒトの父親の名。皇室教会職だったらしいが、スルグレア区に住んでいたとしてもこの地区で
私も聞き覚えのない名だった。
災いの日の爆撃に家族
現時点で考えても答えが出ないことなどはわかっている。私もテシトラもその件に関しては困惑の溜め息を
その後、ノヴォが先導して彼の父親の
リヒトはしばらく泣き止まずに動けなかったという。監視に戻らねばならぬノヴォに代わってノシロンとカシミールが付き添ってくれていたらしい。
事案が事案なだけに、ノヴォはリヒトの許可を得た上で父親の
その結晶に私が触れられるかはまだ判らないが、リヒトのためにも可能な限りは検査してやらなくてはならない。
しかし今は何よりも、リヒトの心情が心配だ。
「彼
テシトラは
「全て私のせいだよ……」
私は机に
全て私の愚かな誤算から始まったのだ。
リヒトの意思は
部屋で暖炉の
「しかし
「奇跡だとしても、その
私は顔を上げて再び声を
「それだけじゃない。他の子ども達も!リア姉さんなら、こんな風に若い
横顔の
スルグレア
「そんな風に言うのはお止しなさい。申したでしょう?見守る強さだと……。
テシトラは
「子ども達を守るため、衝動的に打って出たそうですな。数発撃ったと……。軽はずみな行動は
「治外法権だ。あれは仕方無かろう」
「とはいっても、どこに目があるかわかりませぬ」
私は再び机に
「何度も済まぬ。……わかっているんだ」
私は気を取り直して顔を上げると真っ直ぐにテシトラを
いつもと変わらぬ彼の
「次回までに地下の問題は必ず
「強くなりましたな……」
テシトラはふわりと笑った。
───私には
その笑顔に背中を押され、私は気持ちを引き締めた。
特にリヒトとシエロの心が心配だ。それに編成的にも、ヒンメルとシエロにこれ以上辛い想いをさせる訳にはいかない。
「リヒトとシエロに寄り添う。ついでに編成人材についても解決してくる」
「どうなさるおつもりで?」
正直に言って、内心ではとてつもなく乗り気のしない案なのだが、私は私情を捨てる覚悟を決めた。
子ども達の傷に比べれば、私の恥など安いものだ。
「我々にしか出来ぬことだろう?恥を捨てる。まずはリヒトを連れてビルオレアへ行く。先立って至急に伝書鳥を飛ばしてくれ」
テシトラはふと考えてから、とても満足そうにニコリと笑った。
「ふむ。それは良い考えですな……」
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