面会
翌日──。
馬車の車窓からビルオレアの街並が顔を見せ始めた。
スルグレアと
皇国東部の我等が第1区スルグレアは、今でこそ
皇国北部の第4区セイリオスといえば海産と交易、物流の街。誰もが認める商業の心臓だ。北部に位置するだけあって冬は寒く、この国の罪人を一手に収監するクストス
皇国西部の第3区ルルゴアといえばクラウディアの皇都。クラウディア中心地の
教育、文化、人口、あらゆる分野に
そして皇国南部に広がる第2区ビルオレア。
ビルオレアといえば真っ先に思い浮かぶのが……
ルルゴアの犬。
何も無い。区の色が無いのだ。
皇都ルルゴアに
教育もそこそこ。医療もそこそこ。商業も農業もそこそこ。鉄工業が少し盛んだったのに、それもセイリオスに抜かれてしまった。
全てがそこそこの街。
区には当主の色合いが強く出ると聞くが、あの当主なら仕方ないかもしれない。何せルルゴアの顔色ばかり
しかし、そこそこに何でもあるので不便がないこと。南部に位置するので冬は他区より少し温暖で過ごしやすいこと。この理由によりルワカナの治療を引き継ぐ場として選んだのだ。
そう。私はリヒトの気持ちが少しでも前を向けばと、ルワカナに会わせに連れて来たのだ。先日に前もって面会の連絡も鳥で送ってある。
何度か経過観察に足を運んだが、会う度に少しずつ少しずつ良化していた。主に
寝ている時間も長く、
時間は掛かったが、もうそろそろ面会許可を下ろしても良いはずだ。
面会の話をした時のリヒトの顔は少し
「リヒトォ、レノォン、これも美味しいわよ。食べるぅ?」
車内の向かいの長椅子でリヒトと息子のレノンの真ん中に居座るカッコが、干しブドウを
いつも仕事漬けで看護服姿ばかり見ているので私服の姿が珍しい。服が変わるとガラッと印象も変わったカッコは可愛いらしかった。
「僕いらないです」
「僕もいらなぁい……」
リヒトが
今回の
シエロも気晴らしにどうかと誘ったが、安静にしているヒンメルの
カッコは私の多忙の助けになれば……と手伝いを申し出たが、これではまるでピクニックのようで、誰よりも楽しんでいる。
昨年の末にイータ師長にお酒の件で絞られてからストレスが
───この元気がリヒトにも乗り移ってくれたらいいが……。
「カシちゃんはいらなぁい?」
「いらないわ……」
カシミールまで私のお供として付いて来た。私の左に座る彼女の
いつも私の護衛だと必ずくっついてくるが、今回は疲れも怪我もあるだろうから必要無いと言ったのに、私の事となると心配性なくらい
今回の行き先は2つ。ルワカナのいる医療院とビルオレア当主の屋敷。
カシミールもビルオレアには何度か来たことはあるがビルオレア家には行くのは初めてだ。
私は傷の事以上に、とある理由があって連れて来たくなかったのだが、
私達は
ルワカナのいる医療院はビルオレアの中でも比較的スルグレア寄りにある。
区の
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