戸惑い
「終わった……」
僕は疲れのあまりその場にへたりこんだ。
一気に静寂が押し寄せてきて逆に耳が
「まだだよ。これからだぜ?」
「え?」
「ここのバリケードはノヴォ兄が主導して築いたもんだ。これのおかげで少人数でも防衛してこれた。それに屍人も街から5キロのここまでほとんどいなくなった」
ノシロンは静かにスネイクを構え直した。
「逆に言えばこっち側は屍人だらけってことだよ」
その言葉に急いで辺りを見渡す。
既に僕らは無数の赤い眼光に取り囲まれていて、思わず声を
「気を抜くのは早ぇぞリヒト、あれだけ騒いだからなぁ。
ノシロンはスネイクを振り回す。
美しく青い流星が
「屍人は見つけ次第、排除する。聞いてるだろ?相手しながらジリジリ
ノシロンはスネイクの速度を加速させながら叫ぶ。
「少しずつ下がれ!」
その声と同時に、屍人達は僕らに向かって一斉に飛び掛かってきた。
ノシロンは僕の前に立つと、広範囲に鞭の流星を降らせながら屍人達を次々と倒してゆく。
僕の手合いの時とは全然違う。
僕の時は手加減してくれていたのかと思う程にノシロンの鞭捌きは凄まじいものだった。
初めて見る相手への攻撃の鞭は幾つもの流星のように屍人達へと降り注ぎ、その光を
「
「う、うん!」
ノシロンの邪魔をしないよう状況に目を凝らしながら後退していると、1人の屍人が左側から僕の方へ襲い掛かってきた。
僕は右の腕当ての針を確認し、その屍人に向けて突き出す。
それは長い髪を
───子どもの屍人?……女の子?
その子の目には涙が浮かんでいた。
飛び散った涙は闇夜を背景に、次第に血霧と同じように
───泣い……てる……?
思わず
覆い被されながら、僕はそのまま両手で組み合った。
「ああ?何やってんだリヒト!」
音を聞いて一瞬振り向いたノシロンが、スネイクを振り回しながら叫ぶ。
「ごめん!」
「さっさとしろ!」
少女の屍人は、衝動のままに必死に力を込めていたけれど
僕は掴み合った右手を押し返すように、相手の顔に針を近付ける。
だけど僕はそれ以上動くことが出来なかった。
ふわふわと
「何やってんだリヒトォッ!やれよ!」
「………で………出来ない!」
ノシロンは屍人の大群を
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